皆さんは、”自分の戦闘機”をお持ちだろうか。

戦闘機と言っても、戦争を肯定するのではなく。
男も女も関係なく。
”これがあったから、負けずに生きて来れた”
というものを、お持ちだろうか。


2016年、SLE(全身性エリテマトーデス)という不治の病と一緒に、不安を抱えて退院して来た自分に
「もう一度戦え」
と、友人・三鷹が与えてくれた1台のオフロードRCカー「TAMIYAホーネット」。

観客も誰一人いない、一対一のレース。
アスファルトのオンロードでも続けたが…………

砂漠、ジャングル、岩場、山…………
思いも依らぬアクシデント……………
オフロードは格別だった。
マシンは必ず傷付き。
破損しては修復の繰り返し。

オフロードは、人生そのものだった。
それは…………
整えられたサーキットへ舞台を移しても同じだった。
このような”勝負”を、自分はホーネットとともに10年近く続けて来た。
病魔で打ちのめされたかに見えた自分は、好敵手との闘いを繰り返すうちに。
強くなれてきた。

だが、その自分にトドメを刺そうとすることが起きた。

心筋梗塞。

自分は「あしたのジョー」の力石徹のように、命を落とそうとしていた。

しかし。
何かの力が
「もう一度闘え。もう一度人生を闘え」
と、この世へと引き戻した。

意識を取り戻した自分に与えられた試練は大きかった。
全身の筋肉が無力化し、声も出ず、左手も麻痺し、懸命のリハビリにも関わらず半年間もの入院を余儀無くされ。
仕事も失い。
SLEの発症した時以上の苦難が待ち受けていた。

退院し半年ぶりに家に戻ると、待っていたホーネットも朽ち果てていた。
所有していた動力バッテリーは全て死滅してしまっていて、10年もの勝負で酷使された車体はボディが割れてウィングも取り付け出来ない程になっており、重要なステアリング・サーボの固定部は砕け散っていた。
そして、その状態にも目を背ける自分がいた。

しかし、そんなホーネットの残骸を目の当たりにしながら。
自分が好敵手・三鷹と永く続けてきた”勝負”の、真の意味が初めてわかった。

実車のF1グランプリレースでさえも、興業であり観客あってのこと。
勝負の結果がどのようになろうとも、ドライバー達は自分の感情を観客やスタッフにぶつけることは出来ない。
しかし、自分達がやって来た一対一の勝負は違う。
たとえ実車の1/10スケールでも、勝つ為に相手と向き合うこと、自分自身と向き合うことに全力を賭けられる。
勝てば存分に勝ち誇り。
負ければ負け惜しみを放ちながら悔しがる。
それでいいのだ。
真のレース、勝負とはそうなのだ。
そして……
それこそ、人生そのものなのだと。
「負け」を恐れてはいけないのだと。



昨日。
自分はホーネットのボディを治し、ウィングと金属のサーボ固定部を取り付け。
新しいバッテリーも手に入れ。
復活させた。