剣持は、北陸地方の雪深い里に生まれ育った。
そこでは10月を過ぎ、11月の声を聞くと山々が初冠雪の化粧をし始める。
”冬を迎える”準備も始まる。
上京したばかりの頃、秋から冬にかけて周囲の人々が
「寒い、寒い」
とやたら口にするのが気に障ることがあった。
剣持の地元では、誰もが
「寒い」
などと言うのを聞いたことが無い。
寒いのは当たり前だからだ。
更には
”寒いだけでは済まない”
からだった。
剣持の地元での冬の到来とは、雪との格闘の幕開けを意味していたのだ。
多い時には一晩だけで1メートルの降雪も珍しくはない。
電車も止まり、通っていた高校が休校の日も当たり前のように有ったが、休校だからといって呑気にはできない。
そんな日は親と一緒に屋根に上がっておびただしい積雪を下ろし、下ろした雪を更に近くの小川まで運んでは流して家を守った。
それだけで1日が終わってしまった。
そんな雪との格闘の日々が、雪が降らなくなる4月の中旬まで続くのだった。
だからであろうか、若き剣持が
”何もしなくていい”首都圏の冬を拍子抜けする程楽に感じていて、それでも寒い、寒いという人々を見下していたのは否定出来ない。
アパートの窓を閉め、ソファに座り直し。
剣持は苦笑いする。
「俺も、寒がりになったもんだな」
故郷に居る両親を思い出す。
今頃、雪囲い(家を取り囲み、積雪からガードする木材)に使う新しい木材を買い足しに行ってるんだろうか…………
真行寺麻衣は、両親をどう思っているのだろうか?
そして、消息を絶ったままの父親は今、どこで何をしているのだろうか?
暴かれた結果に剣持は衝撃を受けながらも、新たな想いが生まれて来たのを感じていた。
〈的中・完〉
※文中の団体・組織名及び人名は
実在するものと一切関わりありません
キャラクターアプリ;Picrew.me ChatGTP
Gemini
画像アプリ;You Can Perfect

