麻衣が教室の扉を開けると……クラス全員、拍手で迎えてくれた。

栄太の顔も見える。

「御方様!!
お戻り、お待ち申しておりました!!」
城郭マニア(城マニア)で
自称”ビジュアルは令和でも心は戦国”の
山本君が入口で出迎える。

(お、御方様って???)
麻衣は少し困惑したが
「みんな、ありがとう!!」
と挨拶する。

早速”疑似?海外土産”を配る。
ドイツ菓子「プッファー・ヌッセ」。
”胡椒ナッツ”という意味で、ドイツ菓子特有のシナモン等スパイスの香りがするクッキーである。
何故、訪問先をドイツに仕立てたか?については特に意味は無く、たまたまインポート・マートでバーゲンと在庫数が間に合ったからでしかない。
名前にはナッツとあるが、ナッツそのものではなく、形一つ一つがナッツに似ている為名付けられた。
アイシングやチョコレートで表面を固め、中は弾力ありスパイスの香り高いクッキー地が詰まっている。
本来だとドイツのクリスマス時期にマーケット等で見られる菓子だが、日持ちの良さと麻衣の努力?で何とかクラス分用意した。

「わあ~!麻衣、ありがとう」
あちらこちらで歓声が上がる。
そう………クラスメイト達は、この”外国土産”を心待ちにしていたのだ。
十日間と一週間の間。

(あ〜〜〜〜〜〜良かった!!
何とか取り繕うことが出来た。
これで一番の心配事が消えた)

麻衣がホッとしたのも束の間……………
再び”難関”が押し寄せる!

「麻衣!お土産ありがとう」

麻衣に緊張が走る。
父親が外交官で、幼い頃から自身も各国を回っていた経験のある”海外マスター”!!
嶋崎朱莉(あかり)だ。

「私、プッファー・ヌッセは大好きなの。ドイツに居た頃のクリスマスを思い出すわ」

朱莉は本当に喜んでくれている様子だが…………

「ただね、苦い経験が一つあって。
あんまり好きなもので日本へ持ち帰った時に、空港の税関で止められたことがあってね。
ほら、スパイスの匂いが結構するでしょ?だから税関の係員が薬か何かと疑って。
調べるとかで勝手に開封して中身ぶちまけちゃったの。
私、悲しくてワンワン泣いて。
一緒にいたパパが係員を思い切り叱り付けてくれて、弁償と現品保証させたけどね」

懐かしそうに笑う朱莉の思い出話を、麻衣は
(………で?………で?)
と緊張しながら聞いていた。

「麻衣は税関で何も言われなかったの?
みんなの分までプッファー・ヌッセを買ってくるなんて、匂いも相当なものだと思うけど」
朱莉はさも愉快そうに訊いてきた。

(キタキタキタ!!まずいよコレは〜)
もはや、これまで!
と覚悟した時………………

「麻衣!コレ、かなりヤバいよ」
栄太がプッファー・ヌッセを頬張りながら嬉しそうにやって来た。

「なんか、歯磨きの匂いするけど美味いよね」

朱莉がプッと吹き出す。

「栄太君。
歯磨きじゃなくてシナモンの香りよ。
日本では、あまり馴染みがない味付けよね」

「そうだね。シナモンだかソロモンだか知らないけど、外人の味覚にはビックリだよ」

そんなやり取りをしてるうちにチャイムが鳴り、2限目の授業が始まった。




………学校復帰1日目は
あっという間に過ぎ、下校時間となった。

「ねえ。
今朝、山本君がわたしを”御方様”とか呼んでたの。なんかオカシイでしょ?」

麻衣と栄太は久しぶりに一緒に駅までの道を歩いている。

「ああ。山本は戦国化してる人だから、そうゆう風だろね。
俺なんか、いつの間にみんなから”ダンナ”とか言われてるよ」

「え?栄太も?」

栄太は”しまった!”と一瞬焦ったが
いずれ判ることだと思い。
自分達二人がクラスで公認カップル扱いされていることを話した。

「ええ〜!?
ソレってマジ焦る〜」

「え?なんかマズい?」

栄太は無表情のまま前を向いてキビキビ歩いている。

「…………マズくは、無いけど」

ここのところ。
変身の為のアップデートや華裏那との遭遇等、険しい気持に支配される出来事ばかりだったこともあり。
それが栄太への意識を新鮮なものにしていた。

黙ってしまった栄太の歩調に合わせ、早足で追いつく麻衣。
横に並んだ時、栄太の耳に向かって声高に言った…………

「マズくは無いけど!?」

いきなりの大声にビックリする栄太!

「わ〜かったって!!ホントにもう!」

しかめっ面の栄太。
満面の笑みの麻衣。
けれど、麻衣の握った栄太の手は
思っていたより熱かった。



駅の並びの居酒屋から、焼き鳥の匂いが漂っていた。

〈学校へ帰る・完〉

写真;HARIMA
キャラクターアプリ;Picrew.me ChatGTP
画像アプリ;You Can Perfect