「麻衣!!
どうしたの!?
何があったの!?」


自分より早く研究室を出たはずの娘が

何時になっても帰らない。

スマートフォンにも出ない。

自宅で待っていた美枝は

気が気ではなかった。


しかも。

ようやく帰って来たかと思えば

ボロボロの体(てい)!


麻衣は玄関に到着するなり
倒れ込んでしまった。

「麻衣!?動けないの!?」
美枝はメンテナンス室へ麻衣を運ぼうと抱きかかえた。

すると麻衣は口を開いた。

「………お母さん
わたしにお姉さんて、居るの?」

「え!?」

「………さっき、華裏那っていう人に
会ってきた
わたしの姉だって、言ってた」

「!」


その朝………学校にて
麻衣と栄太のクラスでは
十日間の予定だった麻衣の休学について
更に一週間延長されたことが担任より告げられた。
…………延長申請は今回も美枝から学校へ
「仕事のスケジュールによるもの」
との理由で届けられたが、実際は想定外に起きた華裏那との遭遇で傷んだ身体を点検・補修し、経過を診る為であるのは
言うまでもない。


休み時間。
教室の、あちらこちらがザワつく。
「え〜〜〜!マジィ?」
「ちょっとぉ、有り得なくない?」
「麻衣の親ってセレブだし。仕事同行とか言ってて実は遊びまくってる系かも笑」
「いいよね〜セレブは」
「イケメンのガイジン、漁りまくって遅くなってんじゃね?」
「マジ!?麻衣ガイジンでソーシツかよ笑笑笑」

こうした根も葉も無いガールズトーク=陰口で盛り上がりがちな女子もいる。
一見悪気は無さそうだが、そこからイジメに発展することもある。

栄太は思わず立ち上がった!
「やめろぉ!!
麻衣は、そんな奴なんかじゃない!!」

クラスが静まりかえった。

しはらくすると、お調子者の男子一人が冷やかした。
「よ!さすが夫婦!!」
男子もう一人が、昔の演歌を唄い出す。
「♫ワッタッシの大事なダンナ様〜〜」
緊張が一気に解け、笑いが広がった。
陰口を言っていた女子達も、バツが悪そうに苦笑いした。

栄太も何となくホッとした。
と、同時に
いつの間にか自分と麻衣が”公認”扱いとなっていたことに驚愕!!
(イヤな気はしないが照れくさい草)
事実、翌日からクラスでの呼び名が
”ダンナ”となった栄太であった草

それにしても…………
やはり麻衣のことが気にかかる。
「何か、あったのかな」

チロリン♫
寝室で休んでいた麻衣にLINEが届く。
「栄太だ!」
十日しか経ってないが、随分久しぶりに感じる。

栄太〈よ🙋元気?休学延長のこと
   モトハシから聞いたよ〉

モトハシとは、担任の呼び名だ。

栄太〈な〜〜〜んにも気にしなくていいから😊ゆっくり休んでね〉

このコメントに嬉しくもあり、ちょっぴりさびしくも感じた。
ホントは、早く会いたいね……とかの言葉を淡く期待していた。

麻衣〈ありがと✨またね😊〉

そう、一言だけ返して
麻衣はLINEを閉じた。
数分すると……また栄太からLINEが来た。
急いで開けた。

栄太〈あのさ……なんか困ったことあったら⏰️いつでもいいからLINEしてね👍〉

麻衣の顔に笑顔が戻る。

麻衣〈ありがと〜〜‼️♫💐😆またLINEするね♫ヨロシク〉

すぐさま栄太がスタンプ。

今夜は気持ち良く眠れそう…………
この十日間大変だったことも全て栄太にチャラにしてもらえた、麻衣だった。





…………美枝は。
麻衣から聞いた昨夜の出来事によって
”忘れていた過去”……………いや
”封印していた過去”を思い出すことになった。

麻衣に全てを打ち明けるには
余りにも唐突過ぎるタイミングで……………
昨夜はどう話をして良いものか、困惑しきっていた。
既に麻衣も高校生。
理解出来ない年頃でも無さそうな感じもしたが、そうした決め付けは大人の一方的なエゴでもあり。
本人に思わぬショックを与えてしまうリスクもある。
…………なので麻衣へは

「調査してみるね!」

の一言で取り繕ってしまった。

麻衣が生まれる12年程前。
当時夫だった日向武雅は、東南アジア諸国へ技術援助する任務で単身派遣されていた。
日向は、その頃。
現地で知り合った女性との間に子供を一人授かっていた……という話を離婚後、人づてに美枝は聞いていた。

「………まさか、その子が!?」

もし麻衣が昨夜出会った華裏那という女性が、その日向の子だとしたら………
年齢も一致するどころか
麻衣と同じく戦闘ヒューマノイドへ改造された件も納得出来てしまう。

「ああ……………何という悲劇なの!?」

美枝は頭を抱えた。

しかし自分自身が混乱してしまっても始まらない、毅然と対応して行かなくては!!と。

そして……………

二人を救えるのは自分だけだ!!と。

美枝は決心したのだった。

〈隠された真実・完〉

写真;HARIMA
キャラクターアプリ;Picrew.me ChatGTP
画像アプリ;You Can Perfect