2月12日    山奥の飛行実験場
「ひばり」

曇りだった以外は別段変わったことの無い
コンディションだった
いつも通り順調にフライト
………………………………が
着陸に向かう最終ターンにさしかかった時

「カーーーーン」

立ち木に真正面から
激突!!!!!

モーターマウント(ファイヤーウォール)から前方が全て砕け散った

呆然とした

まさか?
この安全な機体でこんなことが!?

完全に憶測を誤った…………
綺麗に着陸へ入る為に出来るだけ遠方から
アプローチしようとした
しかし…………距離感を見誤った

ショックだった

一緒に飛ばしていたSさんが
可能な限りの部材を拾い集めてくれていた
おかげで
その日帰宅直後にはファイヤーウォールまで復元できた
しかし…………
この機体のクラッシュは
それ以上のショックを私自身に及ぼした
「見えていない!?」
正月3日に「ドリフター」の飛行姿勢を見失った時の記憶が蘇る

やはり………………俺の目は
治っていないのか?

新年に入り
2機も大切な機体を飛行不能の破損に陥れてしまった事実を受け止めねばならない辛さは翌日火曜から私を突発的に
うつ状態にさせた
ただでさえ腰痛・脚痛と闘いながらの日常
もはや生きるモチベーションさえも失いかねない状況も大袈裟では無かった
食欲も無くなり
仕事へ向かう気力も正直起きなかった

たかが模型飛行機

されど模型飛行機

特に「ひばり」は大切な友人からの
自設計機の贈り物であり
事故や墜落等起こす等
私の中では現実となること自体
決して許されなかったのだ!
私は自分の眼を含む
完治していない肉体然り
「ひばり」を操縦しきれなかった自分自身の全てを許すことが出来なかった!!


自分を責め続けていた……………………


この苦しみから逃れる術は唯一つ
一刻も早く「ひばり」を
復活させること
誓った瞬間から
ひばり修復「炎の一週間」が始まった!!

まずは最大の問題である
パワー・ソースの破損をどうするか?
搭載されていた
テトラ製ギア・ダウンユニットのプロペラシャフトはご覧のように根元から無惨にへし折れ使用不可になっている
プロペラシャフトのみのパーツ設定はされておらずギア・ダウンユニットの再購入が必要となるが……テトラさん本社に問い合わせたところ既に生産も在庫も全て終了してしまったとのことで………………
さて…………どうするべきか?
正月に落とした「ドリフター」の形見のブラシレス・モーターの搭載も試みた
しかし軽すぎて前後重量バランスが取れずに却下

そこで………………私は
デッドストックしておいた
最終兵器を採用することにした

ユニオン・モデル製
「ターボモーター」
ギア・ダウンユニット
だッ!!
このユニットの製造・販売元であるユニオン・モデルも既に無い
テトラ製と同じ280系ブラシモーターを積むがユニットサイズは少々大きめとなる為重心その他テストは必須
しかし!
背に腹は代えられぬ

新たに精密に新ユニット取り付け部を加工
ファイヤーウォールをエポキシ接着剤でガッチリと本体へと固定!!
サイズが変わる為エンジン・カウルに必要な加工・再取り付けはとりあえず後回し!
2月17日朝に修復作業完了!!

2月17日     山奥の飛行実験場
天候は快晴!
…………12日のクラッシュ以来
「炎の5日間」は瞬く間に過ぎた
脚腰の痛みに耐えながら仕事もこなし
帰宅すると眠気と闘いながら「ひばり」と真剣に向きあった日々
私にとっては
ただの5日間では決してなかった

現場にはいつものように
Sさんも来ていた
「治しましたよ!」
私は宣言とも決意とも言えない台詞を吐いていた

Sさんより
「手投げをしましょうか?無いとは思いますが重心やスラストが合ってない場合に前に突っ込んだりします。そうしたらすぐにUPを引いてください」
との申し出を頂いた
「お願いします」
この度ばかりは甘えさせて頂いた

…………フルスロットル!!!

テイク・オフ



修復後初めてフライトの「ひばり」は
全くそうとは思えない
真っ直ぐに
ゆるやかに
微動だにもせず水平に姿勢を保ったまま


真っ青な上空を目指し


上昇を続けた!!



「問題無いようですね!」
「ハイ!スラスト調整など一切要りません!!」


ユニットの重さなんて取り越し苦労
いつもの「なかなか降りてこない」愛機の姿だった


そして

修復後初…………帰還!!
もう一人おられた仲間のRさんが
オロナミンCで祝杯くださった!
嬉しい!!!
ようやく自分の心と身体の重みが
軽くなっていくように感じた


さて…………
修復も最後の作業が残っていた
その日帰宅後にエンジンカウルの取り付け作業を行ったが
これが意外と苦戦し
バルサ製だからサクッといけそうと甘く見ていた作業も
やはりサイズも形状も違うユニットを覆う為にカウル内外の加工はトライ&エラーしかなく…………
気がつけば日付けが変わっていた


2月18日    山奥の飛行実験場
綺麗にカウルをまとい
動力にはSさんより頂いたファンフライ機プロペラ用ゴム式固定具と大径ペラも採用でペラ折れ防止とパワーUPを狙い
「ひばり」の完全復活する日が来た!

テイクオフ
昨日と同等の安定感…………だけではない!
昨日より更に大径・ハイピッチのペラを採用したことによりハイギアードなユニオン・ギア・ダウンユニットが本来のパワーを発揮!!
瞬発力あり
グングン機速も出せて低速も安定する
これまでと全く性格の違う「ひばり」に生まれ変わっていた!!


そして申し分無く帰還!
ファンフライ機と同じゴム固定ペラなので
雪で折れる心配無しで安心!
「ひばり」完全復活!!
というよりは性能UP!!!!!


………………「ひばり」復活の為に
費やした「炎の日々」は
おかげさまで大団円で完了することができました
それはとりもなおさず
私自身を復活させる為に費やした日々でもあります
大破した「ひばり」と向きあった時
本当に心が折れそうになりました
私には他にも何機か模型飛行機がありますが
だからと言って
「一機くらいどうなったっていいだろう」
というわけにはいかないんですよね
私に関わる機体には全て
いつまでも可能な限り飛び続けていて欲しい………………
模型飛行機という趣味を始めてから
私はいつもそう願っています
それもまた
とりもなおさず私自身が生き続けていく
モチベーションと同じと言っても良いくらいなのです

その昔
飛行機が発明される前
「人が空を飛ぶなんて絶対に無理だ」
と世界中の多くの人々が考えていました
それがどうでしょう?
飛行機は「無理」を「可能」にしてしまいました

模型飛行機を飛ばす瞬間も
いくらホビーとはいえ
やっぱり緊張します
プレッシャーを感じる時もあります
それは何故かというと
結果がハッキリしてしまうからだと私は考えています
飛行機は「飛ぶ」か「飛ばない(落ちる)」かの二つに一つしかありません
試験等の合格か?不合格か?「どちらかの現実と向き合う覚悟」が必要なのと似ています
簡単な試験
難しい試験
様々な試験(トライアル)と好んで向き合い白黒をつけ続けている
フライヤーという名の人達………………
そんな人達とお仲間にして頂いて
今日も愛機と無事に帰れる
この上無い達成感と幸福感の為に言います

たかが模型飛行機
されど模型飛行機

これが……………………
私が一機の模型飛行機と関わることで得た答えです✨



※以下画像↓
<私と「ひばり」復活の為に最大限のご協力を頂いたSさんのフライト>
人が本気で何かから立ち直ろうとする時
手を貸してくださる方は必ず現れるものですね