今の病気が発症したと思われる辺りの時期、昨年の夏頃から私の体力はどんどん落ちていき。
食欲も減っていき。
天気の良い休日の朝一に必ず行っていた朝のフライトへも……脚が遠のいてしまいました。
あれほど大好きだった飛行機に触る気持ちも、ゆとりも……身体から抜けていました。
今思うと、あの頃既に全身性エリテマトーデスは私の身体を確実に蝕んでいたのです。
そして…………入院。冬を迎えました。
治療により、何日続いたかも覚えていない悪夢から生還した私には。
もう一度飛びたい(飛ばしたい)気持ちが芽生え始めていました。
でも、退院までの3ヶ月の日々を待つ間に、その気持ちも再び失せてしまうかも。
私の人生を支える楽しみの大きな柱を一本失ってしまう……そんな焦りを感じた時。
思い出したものがありました。
紙飛行機です。




自宅にあった、だいぶ前に購入しホコリを被っていた折り紙飛行機のセットを、すぐさま妻に持って来てもらいました。
これならば院内でも作成できる。
発症以来、触りもしなかった模型飛行機。
本当に、これ以上基本的なものは存在しない折り紙飛行機での新しい第一歩です。

最初に作成したのは、折り紙飛行機の世界最高滞空タイムを発揮する名機スカイキング。
次に、主翼のアスペクト比を大きく機体の軽量化が成さたれた発展型、フライヤー。
次に、この二機とは異なり立体形の機体を持つセミ・スケール機という私には未知の領域。ステルスに敢えてチャレンジしました。
一度失ったエネルギーを奮い起たせる為には、そのエネルギーを上回るエネルギーを要して向かわなければならないことに気付いたのです。
しかし。
このステルスの作成には本当に苦戦しました。

一機作成するのに23工程もの折数と細かく緻密な「折り目合わせ」という始めて必要となった技術が私を悩ませました。
一回は完成直前に根本的な間違いをしてしまったのを見つけ、失敗。


そして、二回目。



リベンジに成功!
それでも1枚の紙の状態から二時間半は経過していました。
作成を終えた、ちょうどその時。
その日担当の看護師の方(私と同年輩の男性)が検温に入って来られ、ステルスに大層興味を示されました。そして「飛ばして見せて欲しい」と言うのです。
作成できるだけでもいいと思っていた私には願ってもない、初飛行のチャンスでした。
二人部屋の病室に私しか居なかったことも幸いしました。
2016年1月11日。
人生折り返しの第一歩。
看護師さん一名様立ち会いのもと、新しい未知の世界・立体折り紙飛行機による初飛行です。
どうぞ皆さんも、お見届け下さい。