
発作の為、会社を休んで既に3日目となっていた。
私はまず、妻に車を運転させ自分は助手席に座ることから始めた。
その次は自らハンドルを握るが、一番近いスーパーまで運転して自宅へ戻る。
その次は更に少し遠い店に行って戻る。その次は更に少し遠い…
こうした繰り返しで徐々に感覚を取り戻していった。
気分も落ち着くと同時に不思議と発作も起きなくなった。
「思えば病院で脳も心臓も異常が見られないと言われている。大したことではないのでは」とさえ思えるようになっていた。
もちろん隣りにいてサポートし続けてくれた妻へも感謝しなければならない。
同時に「何も恐れることは無い」と、ラウダがささやきかけた気がした。
しばらくして病名も明らかになった。
精神症・パニック障害。
少なくとも私が恐れていた病名ではなかった。
原因はストレスが主だったものとの医師の説明を受けた。
「1日平均200㎞にもなる勤務中の運転移動距離」
「模型飛行機など細かい作業を伴う趣味」が関連しているのでは?と医師はあくまで仮定していたが、私の生活に於いてこのいづれも欠くことが出来ないものだ!必ず克服してみせると医師に宣言。
「では治療もそれに見合った薬を処方しましょう」と言って貰えた。
完全復活への準備は全て整った。後は自分のモチベーションを高めることに集中し続けた。
それから一年は細切れに発作が仕事中に起きたりしたが、その度に車を停め、安全確保をして気分を落ち着かせてから再スタートをかけた。ただ時折、また不安にやどりそうにもなった。
思えばそんな時やはり私の脳裏に「不屈の男」の精神が宿った。
ラウダは常に私を勇気付けてくれていたのだ。
そして更に年月が過ぎた。
私は今も毎月精神科へ通って自身の心身の状態をチェックしながら、仕事に趣味に家庭にと日々の生活を楽しんで生きている。
思えば、ニキ・ラウダの存在を知らなければ私は今頃廃人になっていたかもしれない。
どんなジャンルやカテゴリーの方でも構わない。アスリートの方がもし、今このブログを読んで貰えていたならお願いしたい。
あなたのファンの子供達に「戦いはフィールドの中だけではない」ことを教えて上げて頂きたい。
あなたの「生き様」を見せて頂くことが、思わぬところで彼らを救うことになり得るかも知れない。不屈の男に救われた、この私のように。