醍醐龍馬/著『明治政府と日露関係: 樺太千島交換条約とその時代』有斐閣(2025/12)
 
 1875年、明治政府はロシアとの間で「樺太千島交換条約」を締結した。
 本書は、この条約を締結するに至った状況を詳述する研究書。著者の博士論文がベースとなっているようで、内容は高度で、この分野に対するそれなりの予備知識がないと読めないだろう。日ロ関係史の研究書としては、長谷川毅/著『北方領土問題と日露関係』 があるが、本書も同様に高度な内容のため、一般的啓蒙書のつもりで読むと歯が立たない。
 1855年、日露和親条約だ締結されるも、樺太に対する国境は定めることができず、これまでのしきたり通りとされた。1867年には樺太仮規則が締結されたが、この時も国境を定めることができなかった。日本は、樺太全島領有や、中間の北緯50度線を境界とすることなどを望んでいたが、実際には樺太へのロシア勢力の進出は盛んだったにもかかわらず、日本の進出は遅々として進まなかった。
 本書は、樺太仮規則以降の戊辰戦争等の日本の北方状況から説明し、樺太放棄反対派だった副島種臣から樺太放棄論者の黒田清隆へ交渉責任者が変わったことや、榎本武明のサンクトペテルブルグでの状況など、日本の状況が詳述されている。また、条約締結の背景としてマリア・ルス号事件のロシア皇帝による国際仲裁裁判と、長崎稲佐ロシア村の話がある。
 本条約でロシアは幌筵島を含む得撫島以北の全千島を日本に引き渡した。本書にはロシアが譲歩した背景の説明なども書かれているが、日本の状況に比べてずっと少ない。
 なお、学術論文のため、参考文献の掲載も詳しい。