松里公孝/著『旧ソ連の分離戦争 なぜ起こるのか、どう管理するのか』名古屋大学出版会(2026/7)
著者は東大教授だったが、退官後の現在は上海外国語大学教授を務めている。旧ソ連の紛争地域研究の第一人者。ロシア・ウクライナ戦争について、もっともよく知る日本人であるが、真実を語る学者なので、マスコミに呼ばれることはなかった。マスコミに出ていた学者は、日本政府に都合の良いことダケを言い、真実を語らないか、知識が乏しい人だった。
本書は、ウクライナ問題のほかに、ソビエト崩壊後の旧ソ連の分離戦争について書かれている。
対象地域は、南オセチア(グルジア)、アブハジア(グルジア)、クリミアとドンバス(ウクライナ)、ナゴルノカラバフ(アゼルバイジャン)、ガガウズ(モルドバ)、沿ドニエステル共和国(モルドバ)の各地。
旧ソ連各地の分離戦争は、本書でおおむね網羅されている。本書の内容は、比較的簡潔で理解しやすい。
ナゴルノカラバフ紛争はアルメニアが完全敗北となり、現地アルメニア人は移住を余儀なくされた。このように至った原因として、本書ではアルメニア大統領パシニャンの無能さを挙げている。ナゴルノカラバフ以外にも、旧ソ連の分離紛争は、所属する国家の運営がまずく、貧困から抜け出せないところで、国家指導者がポピュリズムに走ったことが挙げられているものが多い。
ウクライナに関しては、同じ著者から『ウクライナ動乱(ちくま新書)』が出版されているが、本書とは重複内容は少ない。新書と大学出版会の本を比べると、通常は新書のほうが読みやすいが、本書の場合は、新書よりもかえって読みやすい。
