斎藤貢『』文春新書(2026/7)
 
著者は、元駐イラン日本大使。外交官として、長い間、中東にかかわってきた。
本書は、中東専門家としての、アメリカ・イラン戦争の説明で、軍事力に勝るアメリカに対して、イランが負けていない現実を説明するもの。内容は高度であるが、文章が読みやすく、この地域の知識がなくても、容易に読み進むことができる。

本の内容は、イランの現状、アメリカ・イラン戦争の経緯、高度兵器を持ったアメリがイランに勝てない理由、湾岸諸国の問題など。
イランの現状の中で、イランの理系進学率が高いことを記される。日本の国力低下の原因に理系離れがあるので、この点は日本の教育行政にとっても、大いに参考になるだろう。
高度兵器を持ったアメリがイランに勝てないのは、高価で高度な兵器に対して、安価なドローンで対抗しているため、物量で負けていないことが原因である。また、兵員の死亡についても、アメリカ・イランで世論の評価が異なること、さらに、ホルムズ封鎖により、アメリカのガソリン価格が上がって、トランプ政権が国内で非難を浴びることなどが、原因として挙げられている。本書に書いてあるわけではないが、この戦争は、アメリカにとって不要な戦争で、イランにとって負けられない戦争なのだろう。ベトナム戦争もそうだった。