お家のまわりはすっかり暗くなって、雪がちらちらと降ってきました。お留守番のわっちゃん、お父さんお母さんの帰りを今か今かと待っています。
一人でお留守番はめずらしいことではありませんでしたが、今日は特別です。待ちどおしくてたまりません。今日はわっちゃんがとっても楽しみにしていたクリスマスイブなのですから。
お部屋の真ん中に大きなクリスマスツリー、お母さんと一緒に飾り付けをしました。赤い玉、青い玉、それにたくさんお星様もついています。イルミネーションがピカピカ光ってとってもきれいです。
そしてもう一つ、お母さんの作ったおいしいおいしいケーキも楽しみです。いつもわっちゃんの大好きないちごがたくさん乗っかっています。白いクリームに赤いいちご、わっちゃん、想像するだけでいちごとバニラの甘い香りに満たされるのでした。
「まだかな~」
いつもの時間を過ぎてもまだ帰ってきません。わっちゃん、ぬいぐるみを抱いてソファーにちょこんと座っています。どれくらいの時間が過ぎたでしょう、お母さん達はまだまだ帰って来ませんでした・・・・・・・・・。
「おそいなー、まだかな~・・・」
しびれを切らしたわっちゃん、窓からお外を覗いてみました。するとどうでしょう、いつの間にか降り積もった雪で、あたり一面まっ白になっています。街灯がとてもきれいに輝いています。街並は雪のせいでいつもよりずっと明るくて、まるで昼間のようでした。あまりにも素敵なので、お外でお父さんお母さんの帰りを待つ事にしました。手ぶくろをして、マフラーも巻いて、あったかくしてお外に出ました。もう雪はやんでいます。高い木の枝からこぼれた雪が舞い降りてきました。わっちゃん、手のひらを広げてそっと受け止めてみると雪の結晶が街灯に照らされてキラキラ光っています。積もった雪をすくってみると、ふんわりとしてなんだか不思議な気持ちでした。
それにしても帰って来ません。いつもお母さんの運転する車は向こうの方から帰って来ます。わっちゃん、少し歩いてゆくことにしました。雪の歩道を歩いてゆくと、すぐに仲良しのよっちゃんのお家の前まで来ました。クリスマスツリーがカーテンの向こうに光っている様子がうかがえます。かすかにでしたが、時折、よっちゃんの笑い声も聞こえます。・・・・・。
「私ももうすぐ・・・。 ああ、はやくーー!!」
それでも、まだまだその気配さえもありませんでした。白い街並はひんやりと、そして静かにたたずんでいます。わっちゃん、なんだか悲しくなってきました。わっちゃんはお母さんの帰って来る方向に、もう少し歩いてゆくことにしました。
「まだかな~・・・。」
ずっと歩いて行きました。街のはずれまで来ると、もう街灯はぽつりぽつりと少なくなって、なんだか寂しくなってきました。それでも、まだお母さんの車は見えません。なんだか心細くなってきました。
「どーしたのかなー・・・? おそいなー・・・。」
もう少し歩いてゆく事にしました。次の街灯まで少し暗いので、なんだかよけいに心細くなってきました。わっちゃん、それでもがまんして歩きました。明るい街灯の下で少し待ちましたが、まだお母さんは帰って来ません。それでまた、次の街灯へと歩きました。
幾つ目かの街灯の明かりの中にしばらくぽつんと立っていると、先ほどまでやんでいた雪が降り始めました。さらさらと静かにでしたが、たくさんの雪です。帽子もマフラーもたちまちまっ白になってゆきました。どんどん雪が積もってゆきます。長靴も半分くらいまで雪に埋まってしまいました。わっちゃん、お家に引き返そうかどうしようかと迷いながらしばらくすると向こうの方から誰かが近付いてきます。
やがて街灯の明かりに照らされて姿が見えるようになると、それは大きな雪だるまさんでした。帽子をかぶって、マフラーをして、目は炭で、お鼻はニンジンで出来ています。
「こんばんは、わっちゃん、一人でどうしたの? 」
「お父さんと、お母さん待ってるのー。」
「そう?、寒くないかい?」
「うん、大丈夫。あったかくしてきたから。でも、ちょっぴり寒いかな。」
「ははは、お父さんお母さん早く帰って来るといいね。」
「うん、でも、もうすぐだと思うから、もう少し待ってる。」
「そうかい!?じゃあね。 あ、そうだ メリークリスマス!! わっちゃん。」
「メリークリスマス!!雪だるまさん!!」
雪だるまさんは行ってしまいました。行ってしまうとまた寂しくなってしまいました。
しばらくすると、また遠くから何かが近付いて来ます。リズミカルで楽しそうな鈴の音も聞こえます。
すぐそばまでやって来ると、それは、数頭の鹿のような動物に引かれた立派なそりでした。動物の頭には枝分かれした大きなつのが生えています。鈴の付いた首飾りをして、大きな目がきらきら光っていました。そして、誰でしょう、そりには笑顔の、大きな大きなおじさんが乗っています。白くて立派なおひげを生やしています。そして、白いぼんぼりのついた赤い三角帽子をかぶって、白いファーの縁取りの付いた赤い服を着て・・・・。
「あっ、サンタさんだーーー!!メリークリスマスーーーっ!!サンタさんっ!!」
「メリークリスマス!!わっちゃん。 感心だね、お父さん、お母さんを待ってるんだね。」
「うん、でも、もう待ちくたびれちゃった。」
「大丈夫、もうすぐに帰って来るよ。」
「ほんと!? うれしーなーーー!!」
わっちゃんは本物のトナカイを見た事がなかったのでサンタさんに尋ねました。
「ねえ、サンタさん、トナカイさんのお鼻って赤いんじゃないの?赤くて光ってるんじゃないの?」
「ははは、そーだね、今は光ってないね。あのね、お空を飛ぶときと森の中を走るときにだけ光るんだよ。 あと、良い子がさわると光るかも・・・、 ほら、わっちゃんもさわってごらん。」
わっちゃんは、恐る恐るトナカイさんのお鼻をさわりました。するとどうでしょう、ゆっくりと赤く、そしてだんだん眩しいくらいに輝きはじめたのです。あたり一面の雪も照らされて、キラキラ、キラキラ、それはそれは明るく輝き始めました。今までに見た事もない明るさです。
「わあぁ~~~~!! きれいぃ~~~~!!」
その時でした、誰かがわっちゃんのお鼻をつついています。
「わっちゃん・・・、わっちゃん・・・、」
やさしいお母さんの声です。うっすらと目を開くとお母さんのお顔が見えます。後ろにはクリスマスツリーの飾りがキラキラピカピカ光っています。お父さんのお顔も見えます。
「ごめんね、わっちゃん、雪のせいで飛行機が遅れちゃって・・・。」
ぬいぐるみを抱いたままソファーに起き上がると、わっちゃんは言いました。
「ううん、あのね、雪だるまさんに会ったんだよ!! それにね、サンタさんにも会ったんだよ!! トナカイさんにも~~~!!」
お父さんもお母さんも笑っています。わっちゃんのクリスマスはまだまだ続くのでした。


