$チョコマカオのブログ-夕日2


離島の宿は簡素だった。急峻な山と水平線まで続く海の間の小高い平地にその宿はあった。すぐそばをアスファルト道路が走っていたが車の通行は稀で静かだった。学生達のサークルだろうか、5、6人のグループが宿泊していた。そのせいで食堂は幾分賑やかだった。

夕食を終え、二階の部屋でくつろいでいると外がなにやら騒がしい。窓を開けて見下ろすと、君が、そこにいた。

『◯◯大学、◯回生、◯◯ ◯子、これから、バツゲームを始めまーーーす!!』

大きな声だった。
宿の外灯は一つだったが、よく晴れた月夜のせいでアスファルト道路に立つ君の姿ははっきりと見てとれた。
 
 ♪ぎんーぎんーぎらぎらー 夕日が沈むー  
  ぎんーぎんーぎらぎらー 日がー沈むー
  まっかっかっかー 空の雲ー
  みんなのーお顔もー まっかっかー
  ぎんーぎんーぎらぎらー 日がー沈むー♬

大きく開いた手の平をヒラッヒラッと反転させながら、大きく踏ん張った足で体重移動を右に、左に。それに合わせて腕もまた右に大きく左に大きくと弧を描きながら君は歌っていた。少し、恥ずかしそうだった。

一番を歌いあげると、
 『あのーー、2番もですかーー??』

どうやら下の階の仲間はそれを部屋の中から見ているようだった。

 『2番もやれーーー!!』


 ♪ぎんーぎんーぎらぎらー 夕日が沈むー  
  ぎんーぎんーぎらぎらー 日がー沈むー
  からすよー・・ あれ?・・・

 『あのーー、忘れましたーー!!』

下の階から歌詞の続きを教えようとしていたが要領を得ない様子で、じきに

 『もういい、帰ってこーい!!』

その声を聞いて、ほっとしたように

 『以上、バツゲーム終わりまーーーす!!』

大きな声でそう言うと君はこちらに、いや、下に戻って来たんだっけ。



離島の夜の道路はひっそりと静まり返って、さっきまで君がそこに居たのに・・・。
月明かりに照らされたアスファルト道路の向こうには背の低い針葉樹の群生が山裾へと続いている。そのむこうの山の黒い陰は視界を遮るかのようにそびえていた。見上げると山の稜線のむこうには無数の星が光っていた。









チョコマカオのブログ-松林



松林の中、細い小道を二人で登ったね。振り返ると海が青くてきれいだった。
登りきったあたりに大きな岩が山肌から突き出ていて、自然にそうなったんだろうけど、『ここで一休みしてください』って感じ。そこで、みかん食べたんだ。

君は小さなポシェットから何か取り出して僕に差し出した。サイコロ・キャラメル二つ。赤いのと、白いの。両手にひとつずつ乗っけてどちらか選べと言う。

『ん、キャラメル入ってるんじゃないの?』

『いいから、選んで!!』

『えーーーっ、なんで?』

『いいから・・・』

『そう?・・・じゃー、こっち!!』

早速、期待して中見ると、あたりまえのようにキャラメル二つきり。なんだ、キャラメルじゃんか。見ると君は寂しそうな顔をしてた。

しばらくの沈黙のあと、君は言いだした。もうひとつのにはいいもの入ってたのにって。でもすぐには教えてくれなかった。

休憩が終わって、じゃあ行こうか!って時、その前にさっきの中に何入ってたの??って聞くと、君はまたポシェットからそれを取り出したんだ。


『じゃー、見せたげる!!』


中には、君の手作りの指輪がひとつ、小さな黒いゴム輪に赤い実がひとつ付いてた。





チョコマカオのブログ-風




僕は風になって君の街をさまようことにするよ。そんなふうに言って別れたあの頃がなつかしい。

何年振りかで見掛けた君は、すっかり丸くなって、あんなにスタイル良かったのに。幸せ太りならいいんだけど・・・。そうだよね、よかった。

僕は変わらず風になって、今はこんなところさまよっているよ。野も山も、海はもちろんだけど・・・。そうだね、君の街をさまようことはもう無くなってしまった。

覚えているかな、炭の匂いのする夜を過ごした翌朝は、とても天気が良かったね。
石段に並んで座って、線路の向こうに大きなポプラが風に揺れていたね。葉の表の緑とその裏側の白いのが、ゆったりとした風の塊に交互にひらひら揺れていたね。そのことが僕にあんなこと言わせたのかな。風って。

久しぶりに君の街に吹き込んでみようかな。丁度いいかも知れないね。ほんの少しだけほんわかの風。桜の花が咲いたら、それは僕が通った印だよ。



『・・・そう、じゃあ、あなたは花咲か爺さんね!!・・・』


ん、・・・・・・あ、あはは。