ある町に同い年の女の子が二人いました。よっちゃんとわっちゃん、二人は仲良しでした。
よっちゃんはいつも明るくて、知り合いの人に出会うときちんとご挨拶していました。近所の人はもちろんですが、知らない人にもすすんでご挨拶をしていました。
一方、わっちゃんはごく親しいお友達にはご挨拶できるのですが、他の人にはまったくだめでした。かわいそうに、恥ずかしがりやのわっちゃん・・・・・。
ある日のこと、よっちゃんと、わっちゃん、学校からの帰り道、二人はささいなことで喧嘩になってしまったのでした。
ひとしきり言い争った後、二人は川の堤防のあちらとこちらに離れて押し黙り、うずくまってしまいました。
やがて静かに時が過ぎて、二人はそのまま草むらの中に眠り込んでしまったのでした。
夕方、もう日が暮れかかった頃、よっちゃんの近所のおばさん、そわそわしています。いつものよっちゃんの明るい声のご挨拶、まだなのが気がかりです。今日は、よっちゃんのお母さん、お出かけで帰りが遅くなる事を知っていたのでよけいに心配です。
「おかしい!!」
近所の人達に声をかけるとたちまちたくさんの人が集まりました。みんな、よっちゃんのことを気がかりに思っていたのでした。
早速、みんなで手分けしての捜索がはじまりました。でも、せまい町内のことなのですぐに見つかりました。みんなの声に、よっちゃんはすぐに目が覚めました。
わっちゃんも目が覚めたのでしたが、それでもわっちゃんは恥ずかしがりやなのでそのまま草むらに寝っ転がって息をひそめていました。向こうの方にはみんなの声が聞こえます。
「よかったー!!」
「大丈夫ー?」
「みんな、心配したんだよー!!」
「よっちゃん、どーしたのー?」
「まあ、よかった、よかった」
よっちゃんは寝ぼけていましたが、屈託なく元気にお返事しています。
「どうもありがとー!!ごめんなさーい!!」
「いやー、よかったよかった。」
「ほんと、よかった」
わっちゃん、もうすぐ自分のことも見付けてくれるんだろうって期待と不安の入り交じった気持ちでじっとその場に寝転がっていたのでした。
「ああ、私もよっちゃんのようにきちんとお返事できるかなー・・・?」
すると、みんなの声がだんだん遠ざかって行くのです。どんどん、どんどん遠ざかって行きます。そして、とうとう聞こえなくなってしまいました。
あたりはもうすっかり暗くなって静まり返っていました。
「ああ、みんな行っちゃった。私の事なんかだれも心配してないんだ。どうでもいいんだ・・・・。」
わっちゃんの目には涙があふれます。ぽろりとこぼれた涙が耳元を伝って落ちてゆきます。ほおに触れた草は、もうひんやりとしていました。
その時でした。お空にきらきら光る星に気付いたのです。いっぱい、いっぱい、きらきら輝いています。わっちゃん、お星様に尋ねました。
「ねえ、お星様、私、みんなに嫌われてるの? どうでもいい子なの? 私、わるい子なの?」
すると、お空から返事が帰ってきました。
「そんなことはないよ。みんなわっちゃんのこと大好きなんだよ。」
「だって・・・・・・・・。」
「あのね、わっちゃん。わっちゃんも元気よくご挨拶してみるといいよ。」
「うん、でも、私、恥ずかしいんだもん。」
「大丈夫、大きな声で、思いっきり言ってみるといいよ。」
「大丈夫かなー? 言えるかなー? でも、恥ずかしいなー!!」
「あのね、わっちゃん、わっちゃんのお母さんも、お父さんも、みんな最初は恥ずかしがりでね、それだけじゃないよ、おばあちゃんも、おじいちゃんも、みーーんなそう、恥ずかしがりやさんだったんだよ。」
「そうなの?」
「うん、そうだよ。だから、わっちゃんも大丈夫。絶対に言えるよ。」
「うん!!」
その時でした、遠くから人の声が聞こえます。みんなの声がだんだんと近付いてきます。
「わっちゃーん!! わっちゃーん!! わっちゃーん!! わっちゃーーん!!」


