エラ削り手術 感覚がありません

(皮質骨切り術の副作用) 

専門医が分析いたします


 本日は、久しぶりに

皮質骨骨切り後の神経損傷による

感覚低下についてご説明します。

 

エラ削り手術には

大きく下顎角骨切り術

(一般に長い曲線骨切りと呼ばれる

角を骨切りする方法)と

皮質骨骨切り術があります。

 下顎角骨切り術は

皆さんご存知ですし

皮質骨骨切りもよくご存知ですね。


 皮質骨は、当院はすべての患者に

実施しております。 

しかし皮質骨骨切り単独では

効果がほとんどありません。

 それで効果をもう少し出すために

過度に行うと

皮質よりも深く髄質まで

入っていく必要があり

そうすると神経が丸ごと

剥がれ落ちてしまいます。

(髄質には神経血管が

通っています)

それで私も

すべての患者にして上げますが

(少しでも効果があるなら

何でもして上げます^^)

長い曲線骨切り術と一緒に行い

単独では行いません。


 また、皮質より深く入って

髄質まで入ると

神経損傷のリスクが非常に

高くなるため

髄質まで行かず

皮質のみ骨切りする

特殊な機械を使用します。 

こちらの特殊な機械を

お使いになると

皮質だけ骨切りして

神経損傷のおそれは

ほとんどありません。



本日の患者のレントゲン

正面写真をご覧いただきますと

下顎角が小さくなりましたが

左の赤い丸の中に

ネジが二つ刺さっています。

 エラ削りの手術の場合

ネジを使わないのに

患者に詳しく聞いてみると

以前にエラ削りの手術を2回

すでに受けていらっしゃいました。

 ところが、その最中に

骨を切ったのか

どんな状況だったかは

わかりませんが

ネジを刺したそうです。 

ひとつはっきりしているのは

左顎と唇に感覚がないことㅠㅠㅠㅠ

 下顎角の形が正面から見て

滑らかではありませんが

これは矯正をすれば

済むことですが

感覚がないのは

ちょっと深刻です。


 他の写真も見ることにします。



側面写真でも

ねじが刺さっていること以外は

特別な問題点はないように

見えます。 

下顎角は骨切りを少し

やり過ぎたように見えますが

これは手術前に院長と患者の間で

話し合ったと思われる部分です。 

耳の下の角をなくしてほしい

という方もいます。 

この側面画像では

神経を損傷しても

取り返しのつかない問題は

見つかりません。

 少し滑らかな顎のラインは

また作ればいいんです!!!



パノラマ写真を見れば

確かに赤い丸の中に

ネジが見えて

(なぜネジなのかまだ分かりません)

青い矢印が神経線が

繋がっているのを示しています。 

こうやって見ると

神経が損傷していると

結論を下すのは難しいです。 

ところが、赤い矢印の部分の

骨の陰影が変わる部分があります。

 これは骨の厚さまたは

密度が変わるという話で

真っ黒な部分は

骨が弱かったり骨の厚さが薄い

つまり骨の一部が

欠けている可能性がある

という話です。 


ウォーターズビューでは

この部分について得られる情報が

制限されます。



長い曲線骨切り術は

当然実行しなければならない

部分です。 

ところが、皮質骨切り術は

正面効果を得るために

行うといいますが

効果はどうでしょうかㅠㅠㅠㅠ 

なので院長が無理をして

思い切って骨切りをされて

またこれによって

深刻な問題が発生します。

 深刻な問題は何で

その深刻な問題が発生する理由は

何でしょうか???

 上でしばらく言及をしました。 


私達の骨は三層になっています。

 両側に皮質という

つるつるして硬い骨が

真ん中の髄質という

穴だらけの組織を

両側から覆っている仕組みです。

 ところが、問題はこの皮質が

非常に薄いということです。

 1~2mm程度しか ありません。

 なので皮質骨切りをしても

 大きな効果がありません。

 さらに、下顎角で

より大きな問題点は

この皮質のすぐ内側にある

髄質に神経が

通っていることです。

 その名も有名な下歯槽神経です。

 だから 1~2mmしかない皮質を

骨切りして

もう少し深く髄質に入ると

この神経が丸ごと

剥がれ落ちてしまいます。 

確かに皮質のすぐ中に

神経がある場合もありますし

もう少し深い場合もあります。

 これをしっかり知って

正確に入らなければなりません。


感覚低下の原因を探るために

本日の患者のCTを見ます。




上の写真で赤い矢印が示すように

皮質に穴が開いています。 

穴ではなく

皮質骨切りの際に

切れてしまった場所です。

 ところが、なぜか

穴が深く見えます。 

神経線がちらっと見えるような

気もしますしㅠㅠㅠㅠ

穴に見えますが

実際広く骨切りされています。 

ところが、穴だけが残ったのは

皮質は再生されます。 

上で私が皮質骨切りの効果が

大きくないと言った理由が

まず皮質の厚さが

1~2mmにしか過ぎず

また皮質は上の写真のように

再生されます。 

上の写真で穴として残った部分は

あまりにも深く骨切りしていて

再生できなかったのです。 

下の右側は皮質が

薄くなってはいますが

特に問題はありません。 

長い曲線を描いていないのは

院長によって実力の差があるので

副作用とは言えません。




上の断面写真を見ると

青色の矢印が示すように

下顎角の上部では神経が骨の中に

つまり髄質の中に

ちゃんと入っています。 

ところが、下の写真で

赤色の矢印が示している部分を

よく見ると

右側の患者の左側の

下顎角の神経線が

皮質と共に消えています。

 消えたというよりは

この程度なら神経線が開かれたと

見るべきです。 

神経腺がこんなに

開いたからといって

神経が全部切れたわけでは

ありません。 

CTは影なので

私たちが類推できるのです。

 エラ削りの手術を受けてから

このように神経管が

皮質とともに開いているので

神経が切断されたか

露出したかは

詳しくはわかりませんが

患者の症状から見て

通常の損傷よりは

神経切断になったのではないかと

推測できます。 

繰り返しになりますが

下記CT写真だけで

神経が切断されているとは

言えません。 

可能性は十分ありますし

患者の症状とともに

診断を下すことができます。

 本来はエラ削り手術後に

感覚を低下させることは

一般的にはありません!!!!




上の写真をご覧になりますと

皮質が過剰に切除されて

神経管が開いており(赤い矢印)

下の写真をご覧になりますと

青い矢印が示すように

両方の神経が正常に

髄の中にあります。

 下の写真は皮質骨切りされていない

顎の前の部分です。




上から見た断面のCT写真を

ご覧いただきますと

皮質骨切りになっていない部位の

正常な神経線を

青色の矢印が示しています。

 一方、下の写真を見ると

正常な患者の

右側の神経管(青い矢印)に比べて

左側(赤い矢印)は

皮質骨切り部位と共に

神経管が一緒に切られたようです。 

それでこの患者は

左顎の感覚が全くないです。

 二度と再生はできないので

深刻ですㅠㅠㅠㅠ 

だから下顎手術をする時は

手術前にCT

もしくはレントゲンを通じて

神経線の位置を

はっきり知らなければなりませんが

神経線の高さだけでなく

皮質骨切りをする場合

皮質から深さまで

測定を徹底的にして

実行しなければなりません。

 それから皮質骨切りの場合

皮質だけ骨切りする

特殊な機械もあるので

活用するといいでしょう。



本日は顔骨の中で

最も一般的に行われる

エラ削り手術の副作用で

その中でも皮質骨切りの

副作用である

神経損傷についてご説明しました。 

皮質骨切り術は

単独で大きな効果はなく

長い曲線骨切り術と一緒に行う場合

シナジー効果を出すことができる

施術です。

 効果を大きく出そうとして

皮質骨切りを過剰にした場合

すぐ中にある神経が

損傷することがあるため

皮質のみ骨切りしなければならず

このために特別に考案された

皮質骨切りの機械を使用する場合

今回の患者の副作用のような

問題は発生しないはずです。






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