テレキャスタ−20/ ストラトとの比較(2) | おんがく・えとせとら

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 前回の続き…といっても3ヶ月も間が空いてしまいましたが,テレキャスとストラトの比較。'50プロードキャスターVS'54ストラト,それぞれの音の波形サンプルの比較です。

 グラフを見ていく前に,基礎知識のおさらいをしておきましょう。

 まず,所謂「倍音」とは一体何か?
 よく言われる「倍音が含まれて、気持ちのいい音」というような表現があります。よく分からんまま使われてる例も多いように感じますが、要は、楽器などの音が発せられる時に基音以外にその周波数の整数倍の音が同時に発生し、和音に似た響きを生み心地良く聴こえる…ということのようです。シンセなどの電子音が無機質に聴こえる,というのは倍音が発生しないからだとか。

 倍音(周波数の整数倍の音)というのは,1オクターブ上,2オクターブ上…の音だろうと思いがちですが、実はそうではない。よく考えれば、オクターブ違いの同音の積み重ねでは和音的響きは生まれませんね。

 あと,ギターの開放5弦のラ(A)は440Hzではない!
 ギターの開放5弦のラ(A)は110Hzです。「え,440Hzじゃないの?チューナーにはそういう表示が出てるし!」と思うかもしれませんが、440Hzはピアノの中央のド(C4)の上にあるラ(A4)の音、国際標準音である、ということを示すものです。

 ということで,ギターの開放5弦のラ(A)を例にとると,その倍音構成は以下のようになります。

   Hz 音階
基音  110 A2
2倍  220 A3
3倍  330 E4
4倍  440 A4
5倍  550 C#5
6倍  660 E5
7倍  770 F#5
8倍  880 A5
9倍  990 B5 …以下略

 以上を念頭に置いてグラフを見ると…110Hzの基音の上に,倍音が複雑に重なり合って発生しているのが分かります。
 前面の断面(白い部分)が大きく山が高いほど出力が高い,断面が平行に山に連なっているほど立ち上がりが速い,山の奥行きが高いほどサスティンが長い,右の方の山が高いほど高次倍音が出ている,ということになるかと思います。

おんがく・えとせとら-front フロントPUの比較

おんがく・えとせとら-lear リアPUの比較

 比較すると、
・フロントPUは,テレキャスの方がストラトよりも出力が高く,とくに中域がよく出ており、サスティンも長い。
・リアPUも,テレキャスの方がストラトよりも中・高域がよく出ている。

 もっとも,本データの掲載誌「ギター&ベース サウンドブック」では,「ストラトは1.8kHz以上をほとんど出力していないのはマグネットの減磁によるもので,これがいわゆる"枯れたトーン"につながっている」と解説しています。また,「オールドギターは状態により1本1本音が異なるため,(掲載の)グラフはあくまで参考程度に見てほしい」とも。

 ちなみに,'50テレキャスター(50TC)と'54ストラト(54ST)のPUのスペックは以下のとおりです。(出典;フェンダー・インサイド・ストーリー/1999年10月刊/リットー・ミュージック)
         ワイア  巻き数 抵抗値(kΩ)
50TCフロント  AWG#43 1500  6.2-6.8
50TCリア   AWG#42 1500   5.2-5.8
54ST      AWG#42 1600  5.6-6.2

 AWG「アメリカン・ワイアー・ゲージ」は電線の太さを表す米国の規格単位で、数字が大きいほど細い。#42は直径0.064mm,#43は0.056mm。
 50-60年代中期のフェンダー製品の各PUはほとんどがAWG#42を使用しているのに,テレキャスのフロントPUのみ#43。テレキャスのフロントがストラトのPUより小振りなのは,細いゲージで巻き数が少ないためのようですが,抵抗値は他よりも大きい,すなわち出力が高い。出力差についてはポールピース磁石の影響等もあるかとは思いますが,カバー付きのこのフロントPU,なかなか不思議な存在です。

おんがく・えとせとら-TELE FRONT1
おんがく・えとせとら-TELE FRONY2
 74年テレキャスターのフロントPU