レス・ポールのバリエーション10 / レス・ポールか? SGか?(1) | おんがく・えとせとら

おんがく・えとせとら

音楽のこと,楽器のこと,いろいろ。

$おんがく・えとせとら-LES PAUL

 1961年にレス・ポールがモデルチェンジしてSGシェイプになった後、63年後期までレス・ポールの名前で発売されてたのは有名な話です。所謂,SGレス・ポール。

 以下は,当時の状況を物語る,1962年のカタログ。

おんがく・えとせとら-62catalog 復刻版1962年カタログ
おんがく・えとせとら-1962a
おんがく・えとせとら-1962b

 上記はSGシェイプギターの掲載ページですが,カスタム,スタンダード,ジュニアについては「LES PAUL」と明記されています。
 62年版カタログはおそらく前年の61年には制作されていたと思われ、新ギターの仕様も固まっていたはずですが,掲載されているカスタム,スタンダードの姿は市販品とはいささか仕様が異なっています。

・カスタム
 ネックとフロントPUの間の,継ぎ目隠しのプレートがない(通常はここに「LesPaul CUSTOM」の文字が入っている)。ピックガードのネジ止めが3点(通常は5点)。
・スタンダード
 ネックとフロントPUの間の,継ぎ目隠しのプレートが小さい(通常は台形のプレート)。ピックガードのネジ止めが3点(通常は5点)。ヘッドのクラウン・インレイがあるはずの場所にLes Paulの金文字入り(通常はトラスロッド・カバーにネームが入る)。クルーソンのつまみが2コブでない。PUセレクターのリングがない。

 一方,スペシャルとTVはトップのモデルネームにレス・ポールの文字はなく,仕様説明の末尾でこっそりと「SG」という名称で紹介されています。ヘッドの「Les Paul」デカールもありません。TVとジュニアは色が違うだけで価格も同じなのに,一方はSG,他方はレス・ポール。これは如何に?
 また,TVモデルというのはあくまでも1PU版のみを指していることが分かります。2PU版のクリームカラー・モデルはTVではなく「SGC」という名前になっています。

 シングルカッタウェイ・レスポールのセールスが芳しくないため,ギブソンの独断でSGシェイプへのモデルチェンジが行われた,というのも有名な話ですが,レス・ポール氏は後年「尖ったツノが突き刺さりそうで,あれじゃ楽しく演奏できない。私の了解を得て発表すべきだと言ったんだが,そうはならなかった」と語っています。
 ちなみに,シングルカッタウェイ版の出荷量は,スタンダード(58年までは単純に「レス・ポール」モデルという名称)の最盛期が1953年の2245台,末期の58-60年にはその1/3~1/5に落ち込んでいます。57年ゴールドトップが247.5ドル,59年サンバーストが265ドルと価格が上昇したことも,多少影響しているかもしれません。

 気に入らないながらも契約上の縛りがあったためか,レスは冒頭のとおり自身の名前の入ったニューモデルを抱えた写真を残しており,アルバムジャケットでもその姿が見られます。
 63年には一大転機が訪れます。メリー・フォードとの離婚に,「レス・ポール・モデル」の名称使用打ち切りです。後者については使用権料を慰謝料算定の対象にされるのを嫌ったため,という話も聞いたことがあります。メリーは3人目の奥さんだったとのこと,過去の経験に基づいてそうしたのかもしれない。が,実際はどうだったんだろう?

$おんがく・えとせとら-LPSG