テレキャスの顔はこう変わった/'50-'79 | おんがく・えとせとら

おんがく・えとせとら

音楽のこと,楽器のこと,いろいろ。

 テレキャスターの仕様変遷,まずはギターの顔とも言うべき,ヘッド部分について。

 テレキャスターは,1949年に原型がほぼ完成し,翌50年にまず1ピックアッブのエスクワイアがカタログで紹介されます。パイン(松)ボディ,トラスロッド無しのエスクワイアが同年のショーに出展され,並行して2PU・アッシュボディ,トラスロッド有りのブロードキャスターが製作されたようです。
 以降,ブリッジやノブ,ピックガードはじめ細かい部分は時代により変更があるものの,外見上はそう大きな変更はありませんでした。(実際は,70年代に入ってボディラインが若干変化しましたが。) 
 そんな中で,比較的変化を確認しやすいのが,ヘッド部。以下、年代別に収集したサンプル写真で確認。

50BC 50年プロードキャスター
スパゲティ・ロゴに"BROADCASTER"のネーム。ストリングガイドは丸形,マイナスねじ止め。ペグボタンはクルーソンの丸形。約200本のブロードキャスターが作られた。
51NO 51年ノーキャスター
グレッチ社からドラムセット「BROADKASTER」との商標バッティングを指摘され,回避策として上記デカールからモデルネームを切り取った,所謂「ノーキャスター」。
52 52年テレキャスター
この年の10月頃から「テレキャスター」に。
53tele 53年
54 54年
55 55年
56 56年
この年の途中からストリングガイドが波形に変更。某楽器店で「波形のストリング・リテイナーはどこに?」と尋ねたら「ああ,カモメ形のストリング・ガイドね」と言われた。Vintage Guitars Infoでは「蝶形ストリング・ツリー」とある。呼び名は様々。ストリングガイドの取付位置変更に伴い,デカールがヘッド上方へ移動。
57 57年
このサンプでルでは3・4弦用にもストリング・ガイドが追加されている。色焼けが激しく,半分剥がれかかったデカールのFenderロゴが金色に見える。
58 58年
59 59年
60 60年
市場の要求を容れ,59年にはワンピース・メイプルネックを止め,指板はロース…違った,フラット貼りのローズ(所謂「スラブ・ボード」)に。それに伴い,ウォールナットのトラスロッド栓が無くなる。
61 61年
62 62年
デカール,"TELECASTER"の下にパテント・ナンバーが3個表示されるようになる。
63 63年
指板がラウンド貼りのローズに。
64 64年
65L 65年レフティ
65 65年
65年1月,フェンダー社は1300万ドルでCBS(Columbia Broadcasting System)に売却される。この年,ストラトキャスターは「Fender」デカールが黒縁金文字のトランジション(経過)ロゴに変更されるが,テレキャスターはまだスパゲティを継続。
66 66年
テレキャスターについてもトランジション・ロゴを採用。この年,オプションでメイプル指板(貼りメイプル)が復活。
67L 67年レフティ
この年も一部トランジション・ロゴが見られる。前年の積み残しかもしれない。
67 67年
金縁・黒文字のモダン・ロゴに移行。このサンプルは色焼けにより金縁が見にくい。Fenderの後に,登録商標を表す◯Rを表示。TELECASTERの文字も大きくなり,位置変更。また,ペグがクルーソンからFキー(クルーソン製)に変更,ボタンが角張ったタイプに。
68 68年
貼りメイプル指板のサンプル。トラスロッドの栓がない。

68R 68年オールローズ
69R 69年オールローズ
上はジョージ・ハリスンのために作られた最初のオール・ローズ。後にファクターベースを製作するフィリップ・クビキが担当した。すでにお蔵入りになったスパゲティ・ロゴである。また,トラスロッドの栓がない,ということで指板は貼りローズ。
下は,69年の市販品。こちらも,黒い生地に映えるという点でトランジション・ロゴを採用したと思われる。こちらのネックはローズ・ワンピース。メイプルのトラスロッド栓,ネック裏にはストライプがある。
黒文字では埋もれてしまうためか,どちらもモデルネームは無し。4kg超で,重いらしい。

69 69年
ローズ指板だがトラスロッドの栓がある。ロッド後組込などの工程のせいか?
いるんだよなあ,無理矢理タバコで焦がすヤツ。ギブソンでは見た事ないけど。
70 70年
69年頃にワンピース・メイプル・ネックが復活。上記サンプルはトラスロッドの栓がある。ただし,フィニッシュはラッカーからポリエステルに。剥がれ防止のためデカールを貼った後にヘッド部にラッカー塗装するため,ヘッドのみ茶色く変色しているものが見られる。
71 71年
72 72年
73 73年
73 73年カスタム(参考)
前年の72年頃,カスタム,デラックス,シンラインではストラト同様,ネックに取付角度を調節できるマクロティルトが組み込まれたため3点止めになり,ヘッド部にブレット(弾丸)と呼ばれる突起が突き出た形になる。本家テレキャスターは4点止めが継続されたため,ブレットはない。
74 74年
72年頃から,ストリング・ガイドが3-4弦用にも標準装備されるようになる。
75 75年
76 76年
ネックプレートに入れられていたシリアルナンバーがヘッドデカール「Fender」の下に移動。初期は「76xxxx」,途中からSEVENの頭文字と組み合わせて「S6xxxx」と表示。また,「TELECASTER」の後にも◯+Rのマークが付加され,下側には「MADE IN USA」の文字が。建国200年を迎えての追加か?Fチューナーがシャーラー製に変更される。ポストはクルーソン製よりも若干太いとのことだが,見た目には分からない。
77 77年
78 78年
79 79年

 フェンダーは70年代末にはカスタムなど傍系モデルの生産をすべて中止し,レギュラーモデルに集中化を図ります。そして80年代に入り,82年には原点回帰となる'52ヴィンテージを発売、単純に「テレキャスター」とのみ名付けられたギターは同年に生産終了し、以降はスタンダード・テレキャスターなりいろんなモデルネームを持つテレキャスが登場してきます。まるでウルトラ・シリーズか仮面ライダー・シリーズの如く。
 一方、85年にはCBSが撤退しフェンダー・ミュージカル・インストゥルメント社として独立,87年にはカスタム・ショップを開設するなど,会社自身も新しい方向を目指していくことになります。

 70年代以降は,フェンダーだけでなくギブソンでも質の低下が顕著になり,それがヴィンテージ回帰を生むことになり、さらには80年代に入って両者とも経営に行き詰まり,自ら50-60年代に回帰することで復活を遂げるというのは,何とも皮肉な話です。