前方から内股気味に歩いてくる男がいる⋯
男「あ、○○さん!先日はどうも!」
普段滅多に知り合いに遭遇しない通りで声を掛けられた。
《あ、この間子供の父兄の懇親会で隣で飲んでた人か?名前が出てこないな⋯⋯》
男「○○さんちも大変だよね!子供まだ低学年だから父兄会当分辞められねえな!」
《あの時初めて会話して、そこまで覚えられてるのか》
「まぁ、会長だけは押し付けられないよう気を付けますよ。」
《何か話し拡げたいが名前が出てこない⋯》
男「ところで○○さんはお仕事なんだっけ?この前聞いたと思うけど、最近物忘れが酷くってすまんな!」
《いえいえこちらこそですよ⋯⋯》
「ゆ、郵便の仕事ですよ。」
《早くこの場を去りたいな・・・》
男「あ、そっか郵便でしたね!自分の名前と覚えておけばいいか!」
《下の名前?郵⋯便⋯、べ⋯便(べん)?》
「お、お仕事何されてましたっけ?」
《笑いを堪えてうまいこと聞けたか?俺⋯》
男「俺はトイレとか水廻りの仕事だよ。」
《ぷはっ⋯いや笑ってはいけない⋯》
男「ま、早い話が水商売てやつか?クククッ」
《笑えねぇよ》
しかしあまり年齢の変わらなそうなこの男、
ふと、相手がタメ口でこちらが敬語を使ってるのが気になり、
何かが吹っ切れたようにボクは訊ねた。
「失礼を覚悟で聞くんだが、、、ユーの名前は⋯」
《いくらなんでもYOUは失礼だったかな⋯》
男「そーそー、変わってるだろ?」
「え???」
男「ユーは珍しいからな!」
「え?ボク変わってます?」
男「いや、”○○”は普通でしょう。」
そこでやっと気付いた。
「どんな字を書くんです?」
男「ユは自由の”由”に、宇宙の”宇”だよ!」
疑問から解放され安堵し、
この男とたくさん話したくなってきた。
「由宇さんこれからどちらまで?」
男「そーだ!!漏れそうだから帰るよ~!また今度ね~!」
「あぁ⋯、ハイまた!」
さっきよりさらに内股になった格好で歩いていく由宇さんの後ろ姿を見送った。
《ユー、二度と忘れないぜ⋯ぷぷっ》
-END-
(この物語はフィクション、登場人物は架空です)
ちょっと日常でもありそうな


ジャバね
P.S.
本日はファイトマネーの日


