「なっちゃったもんは仕方ない。治しましょう!」
初診時のT医師の言。
レッツ。絶妙な言い方だ。
がんになった医師が、自分の身体を誰に任せるか、次から次へとセカンドオピニオンを取りまくり、結局、「治してみせます」と断言した医師を選んだという話を人から聞いた。同じ医師としてその言葉の重みがわかるからこそ、自らを託したのだと思う。
でも私には、治しましょうという言葉の方がしっくりくる。私と医師はレッツの関係。チーム。どこかで読んだがバッテリー。患者がピッチャーで医師がキャッチャー。自分の身体を自分で守らなければいけないのは大原則だけど、投げるべき場所がはっきりしているのは何よりだ。そして、キャッチャーの選んだ球種に、首を縦に振るか横に振るかも自分次第。でもバッテリーの目的は同じ、アウトを取ること。
弁護士ならば、どんなに人格がアレでもクライアントの要求を全て叶えてくれたら、それはもう大変優秀だと評価出来る(異論は承知で敢えて)。弁護士はカウンセラーではないから。人柄が素晴らしく、話もよく聞いてくれるけど、相手方の弁護士または検察官に負けているようじゃ話にならない。
でも、医師は違うのだね…。信頼を得ながら、テクニックも備えていなければならない。
医師にとって患者はone of themなのに、患者にとって医師はonly one。そんな不均衡な状態で信頼なんて無理無理、治してもらえればそれでいい。今までの私はそんな風に心にプロテクトをかけていたが、それは大間違いだった。医師を信頼すること。それがどれほど自分の心身に良い影響を与えるのかを、今、実感している。
私はT医師を信頼しているし、とっても優しい婦人科医にも出会った。プロフェッショナルな看護師や職員達にも囲まれている。あとはアウトさえ取れれば! 0-0で迎えた9回裏、あと3人。
全員で声を揃えて「治しましょう!」それが私の今である。