宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」が7月14日公開されて、第一位を記録したそうです。

 

「 宮崎駿監督(※クレジット上では、今回は宮﨑駿としている)の10年ぶりとなる最新作『君たちはどう生きるか』が7月14日から公開され、4日間で興行収入21.4億円(動員135万人)を記録したことが話題になっている。」

出典:『君たちはどう生きるか』ヒットに映画関係者も驚く3つの“異変” | Business Insider Japan

 

 

 

 SLAM DUNK FIRSTのような宣伝手法もあるかと思いますが、私は、「予備知識もなく映画に向かってほしかったのでは…」と思いました。見る人によって、「もう一度見よう」と思う人もいれば、「よくわからない」という人もいると思います。キャラクターや時代設定にしても、時間軸が相当込み合っているので、SFセンスや読書に長けている人でないと、キャラクターのバックグランドまで考えが及ばないように思いました。

 

 

 

ヒヨコ例えば、ポスターのアオサギ。

 

 

ネットで「コウノトリが出てくる」と書いてあるのをみて、「汗うさぎ?」と思いましたが、実は、アオサギ(鳥綱ペリカン目サギ科アオサギ属)のことでした。

 

 

 

本当は首が長~い

 

 なお、古代エジプト神話の聖鳥ベヌウ(BENU)は、アオサギがモデルとされています。原初の神アトゥムの化身として、混沌の中にあった世界に初めて泣き声を発し、有と無を分けたという。また、原初の海より太陽の卵が生まれたとき、その卵を抱いて孵化させたとされています。
そのため「太陽の魂」と呼ばれるそうです。(ご参考

 

 

また、タイトルの「君たちはどう生きるか」という書籍が原作になっているわけではなくて、亡くなった母から託された本でした。「君たちはどう生きるか」を読み込む主人公の少年 眞人(マヒト)の原画が映画のテーマ曲 米津玄師さんが作曲した「地球儀」のCDカバーになっています。

 

出典:ジブリ公式Twitter

 

 

 

 

 

 

 

 

注意注意注意ここから、ネタバレです。注意注意注意

 

 

 

 


ふんわり風船ハート物語

 

 時代は1944年のこと。東京への空襲の炎の中、眞人は入院中の母を失います。1年後、父は母の妹、ナツコと結ばれます。母の田舎に二人は引っ越し、物語はそこから始まります。母の実家はお城のようなお屋敷でした。「母が待っている」というアオサギの言うとおりについて行くと同じ敷地の中に塔があり、入り口は泥で塞がれています。のちにナツコからは眞人の遠縁の大叔父がその塔で行方不明になったことをナツコから聞かされます。アオサギは挑発的で池の蛙の大軍を使って眞人を塔の中に連れ込もうとしますが、ナツコの矢がアオサギにあたり、眞人は解放されます。

 
 
 さて、眞人は内省的。学校でもいじめの対象になります。泥だらけになったところ、自分で石で頭を殴り、「転んだ」といい続けつつ、ナツコを拒絶します。そんな中、みつけたのは「大人になった眞人へ」と書かれた母の書籍「君たちはどう生きるか」でした。
 
 

 この後、眞人は行方不明になったナツコを探しに行く途中、アオサギに導かれて、婆やキリコと塔の家に迷い込み、数十年前に行方不明になった大叔父、そして、結婚する前の母に出会うのでした。

 

 ナツコのまねをして、アオサギの風切りの7番羽で矢をつがえて放つと、その矢はアオサギをおいかけ、嘴をつらぬきます。そうなると、アオサギは鳥としての力を失って案内人として、眞人とともに大叔父の元に歩むことになります。

 

 

 

 

 

 ここから、「不思議の国のアリス」のような不条理の世界に突入します。

 

シーン1 漁師キリコとの出会い

出展:https://www.ghibli.jp/works/kimitachi/

 

 ペリカンに襲われる真人を救ったのは若いキリコでした。キリコは魚を捕ることを生業としています。キリコがとらえた魚を食べて空に飛び立つワラワラ。

 

ワラワラ

出展:​​​​​​​https://www.ghibli.jp/works/kimitachi/

 

キリコによるとわらわらはこれから生まれ行く命なのだそうです。わらわらを餌にするペリカンの群れ。わらわらを守るためにペリカンを火の矢で射るヒミ様。なお、その世界で生きているのはキリコとヒミ様だけのよう。

 

シーン2 ヒミコとの出会い

 

 

出展:​​​​​​​https://www.ghibli.jp/works/kimitachi/

 

 ナツコを探して城をさまよう眞人とキリコ。ナツコを見つけますが、それは罠でした。ヒミコと逃げる眞人。そしてある番号のドアが元の世界に通じることを知ります。(このあたりは映画「インターステラ」に通じる感じがしました。)

 

シーン3 大叔父との出会い

出展:​​​​​​​https://www.ghibli.jp/works/kimitachi/

 

 ナツコを探して、鍛冶屋のいえに行くとセキセイインコたちに乗っ取られていました。セキセイインコの王様は世界を分けてもらいたくて大叔父に会いたがっています。セキセイインコとアオサギに導かれて、眞人は大叔父に出会います。大叔父は、この世界を自分の血筋に引き継ぎたいと考えており、眞人を第一の候補者と考えていました。

 

 無垢の石を組み立てれば、世界はそのまま持続するのだそうですが、眞人は頭の傷を見せて、「僕は純粋じゃない。悪意があります。これがその証拠です」と宣言し、拒否します。そして、その世界は崩壊し、塔も崩壊していきます。

 

 眞人は無事にナツコを救い出し、世界を脱出します。ところが、ヒミコとキリコは別の時間に戻ります。

 

■最後のセリフ

ヒミ様 「私は眞人のお母さんになるんだからな」
眞人  「そしたら病院の火事で死んじゃう」
ヒミ様 「火は平気だ、素敵じゃないか眞人を産むなんて」
眞人  「だめだヒミは生きてなきゃ」
ヒミ様 「お前っていい子だな」

出展:​​​​​​​https://www.ghibli.jp/works/kimitachi/

 

 

 そして、眞人はキリコがくれた人形のお守りのおかげで、塔に迷い込んだ記憶はなくさずに現世に戻っていくことになります。

 

 


 

 

 


ふんわり風船ハート感想

 

 たぶん、感想はそれぞれ好きに書いていいのでは…と思いました。「おもしろかった」「よくわからなかった」でも何でもよいので、思ったことを残しておくことが大事かと。「アオサギ、かわいい」、「セキセイインコの王様はハト三郎ににている」などでもいいので、映画からインスパイアを受けたことを箇条書きでもまとめておくのもいいかもしれません。

 

 自分の感想やインスパイアを受けたことを残しておくことこそが、10年先、20年先の自分の糧になると思うからなんです。この映画は情報の波の向こうに置き去りにしちゃいけないと思います。

 

 この映画、文字で読んでいたら、途中で投げ出してしまっただろうと思います。でも、最後まで見せてしまうのはやっぱり、宮崎アニメ。鑑賞してから1週間以上たってもこれだけ覚えているのですから、心に残るファクターがたくさんあったなぁと実感しています。

 

 見る人のバックグラウンドによって、感想は変わると思いますが、私は、血のつながった母と息子のなんともいえない関係性を生々しく感じました。眞人は義理の母ナツコの大きなお腹に、男性としての父の影を見ています。(憎めない俗物のお父さんを木村拓哉さんが好演)

 

出展:​​​​​​​https://www.ghibli.jp/works/kimitachi/

 

 彼自身も気づいていなかったのだと思いますが、私は、眞人は、ナツコさんもお腹の赤ちゃんもいなくなってしまうことを望み、自分を傷つけて嘘をついて学校を休んだと思っています。でも、ナツコさんがアオサギに襲われた眞人を助けるために矢を放ったあたりから、少し変ってきたのかなと。

 

 最後、自分の嫉妬や不安、悪意を認めることで、彼は塔の外に出られたような気がしています。

 

 

長文、お付き合いいただき、ありがとうございます。