今月みたい映画は以下の3本。
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名探偵コナン 黒鉄の魚影
そして
この3本の公開は、2023年4月14日に集中。search以外は鑑賞できました。特に、2022年セザール賞、7冠とった「幻滅 ~メディア戦記」は面白かったです。フランス映画だから、かなり赤裸々ですが、ミュージカル「レ・ミゼラブル」が好きな人にはぜひみてほしい映画です。
概要:
19世紀フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの小説「幻滅 メディア戦記」を、「偉大なるマルグリット」のグザビエ・ジャノリ監督が映画化。
19世紀前半。フランスでは恐怖政治が終焉を迎え、宮廷貴族たちが自由と享楽的な生活を謳歌していた。詩人としての成功を夢見る田舎町の純朴な青年リュシアンは、貴族の人妻ルイーズとパリへ駆け落ちするが、世間知らずで無作法な彼は社交界で笑いものにされてしまう。生活のため新聞記者の仕事に就いた彼は、金のために魂を売る同僚たちに影響され、当初の目的を忘れて虚飾と快楽にまみれた世界へと堕落していく
出典:映画.com
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(記事抜粋)
200年も前のパリでフェイクニュース横行、金儲けが主役…現代に通じる衝撃の物語 映画「幻滅」14日公開
(抜粋)
「月曜日がドパルデュー、火曜日がドラン、水曜日はド・フランスというように、素晴らしい俳優たちにとっかえひっかえに来ていただいて、まるでワルツを踊っているようでした」とヴォワザンは語る。
何にもましてストーリーが現代に通じるというのがミソ。200年も前のパリで、すでにこんないやらしい社会常識がまかり通り、フェイクニュースが横行し、金もうけが主役だったというから驚くばかりだ。
「私が撮りたかったのは、キャリアを殺し、劇場で縄張り争いをし、インクを武器に抗争を繰り広げるギャングスターのような自称ジャーナリストです。意地の悪さや残酷さ、悪意は私にとって暴力とおなじくらい映画的な素材です」とジャノリ監督。皮肉屋バルザックの痛烈なフックが、現代人のあごにヒットしたような衝撃だ。
(抜粋ここまで)
出典:夕刊フジ
以降 ネタバレ
感想
1989年 ラクロ原作の「危険な関係」がアメリカで制作されたとき、その豪華さリアルさに圧倒されました。1995年フランスでは「リディキュール」という映画が公開されましたが、当時の絵画を見ていると、「危険な関係」のほうが、時代考証については、しっかりしていると思いました。
ところが、近年、映画に投資をする人が少なくなったのか、「何かの続編」「翻案の翻案の翻案…」といった映画がハリウッドで横行し、どんどん質が落ちて、暴力的な描写が多くなっている気がします。芸術やエンターテイメントは、何かに対する渇望や怒りから、飛び出しくることが多いと思うんですけど、渇望も怒りの矛先も、ハリウッドでは真綿で封じられたような感じがしています。アメリカ以外で制作される映画のほうが面白いんじゃないのかな…。
この「幻滅」はそんなハリウッドに対しての快進撃に思えます。フランスは19世紀の建築物が残っていて、タイムスリップのようにその時代の描写ができることが強いなと思いました。映画のセット(いわゆるハリボテ)で撮影されるのと、リアルで撮影されるものの差が大きすぎます。
日本も外国の投資家に身売りするような節操がないことになっているけれども、歴史のあるものや自然を破壊することの 将来の損失ってわかっているのでしょうか…。
閑話休題
この映画は19世紀の文豪オノレ・ド・バルザックの小説「幻滅 ~メディア戦記~」の映画化。18世紀末、ブルボン王朝を陥れたメディアの嵐は、ナポレオン帝政期をすぎても健在。小説の舞台は、ナポレオン没落後の王政復古の時代。パリでは、王党派と自由党とがしのぎを削っています。ただでさえ、無一文の田舎者が自立するのは、分別と才能が必要なのに、主人公のリュシアンは純情と自身の才能におぼれていきます。
考えてみたら、同時代、「レ・ミゼラブル」でジャンバルジャンは、パンを盗んで10数年も牢獄につながれました。また、コゼットを見受けするためのお金は1500フラン(3百万円)だったわけですが、この映画のリュシアンはパリにきて数日で数百万円を浪費します。
ですが、記者として成功し、絶頂にのぼりつめますが、如何せん、借金で作られた虚偽の城の王でした。
彼が愛した女性以外はすべて敵にまわります。挙句の果てには騙され、陥れられて、アングレームに帰郷することになります。長編小説にもかかわらず、人間描写に関するナレーションがすばらしくて、かたときも目が離せません。
また、配役がうまい。リュシアンを演じるパンジャマン・ボワザンは今作で新人賞を獲得した有望株。純粋だけど愛や現実に盲目なリュシアンを終始、不安な感じで演じ切りました。この人の顔、向かって左側のほうがひきつった感じがします。
きれいなお顔なんだけど、左側のほうれい線の強さが気になりました。「このリュシアンを演じるにあたって、片側に偏った感情表現が自然にできる」のであれば、これからが楽しみな俳優さんのひとりです。作品選びを間違えないようにキャリアを積んでほしいです。
「芸術は自らが燃やしたものを糧にします。映画とは本来、現実や書物の変形です。そうでなければ、何の意味があるでしょう。」
上記はグザヴィエ・ジャノリ監督の言葉です。この原作に会ったのも主人公リュシアンと同じ年齢のときだったそうです。また、バルザックに関することでは有名な教授に巡りあうことができ、いつしか「幻滅」を映画化することを夢をみていたとのことでした。
バルザックの小説は、遠い昔に「谷間の百合」を読んだきりなので、この機会に書籍をあさろうかと思っています。
参考書籍