【映画関係】「私の男」舞台挨拶(@TOHOシネマズ川崎) | いろいろといろ

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 桜庭一樹さんの原作「私の男」の舞台挨拶にいってきました。
 予告編を見たときから、私が小説から感じた「私の男」ではないイメージがあって、心惹かれて、応募しました。以降は、映画の感想と舞台挨拶時のお話です。ネタバレなので、これから映画を見る人は気を付けてください。

(以降ネタばれ)
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■感想

 冒頭は極寒の北海道の紋別市の流氷から花が這い上がるシーンから始まり、盛夏にさしかかろうというのに、これからの映画の展開を予言しているかのようで、鳥肌がたちました。
 
 淳悟と花、出会うべくして生まれてきたお互いの「分身」。
 迷い込んだ深い森の奥の居心地のいいぬくもりの中で、二人とも森の外から彼らを探すが聞こえなくなってしまった。そして、その二人の巣の災禍の渦に巻き込まれていった人々…。淳悟の恋人の小町、大塩さん、田岡刑事…。

 流氷が浮かぶ凍った海の冷たさ、二人の棲家の異様なにおいといった小説から感じることができなかったものがスクリーンの中からとめどもなく溢れ出してくるようで…。熊切監督プレゼンツ「私の男」の世界観に圧倒されました。
 
 世間様では「背徳」というのでしょうが。桜庭が付けた「腐野」という強烈な苗字のように、累々たる腐乱した死体が積み重なる地獄にも関わらず、妙な芳香が漂っている…なんていう感じ。
 
 また、二階堂ふみさんが発するエロスがすごかった。
 普段は眼鏡をかけて普通の女子学生なのに、ひとたび眼鏡をとると、まっすぐ見つめる瞳の虜になってしまいます。また、彼女独特のすこし詰まり気味の話の仕方が、言葉の奥にある花の危うさを醸し出している感じがありました。
 
 最後に花が淳悟にいう言葉。
 これはなんといっているのか、舞台挨拶で質問がありましたが、結局「ないしょ」ということでした。女性にしか聞こえない言葉だそうです。オで始まる3音(たぶん)。

 #ここでは書けないくらいの、相当卑猥な言葉のような気がします(^^;。





■舞台挨拶


 劇場はシネマイレージがたまるTOHOシネマズ川崎の舞台挨拶。
 熊切監督、浅野さん、二階堂さんの最後の登壇、また上映後ということもあって、ざっくらばらん舞台挨拶でした。
 
 印象に残ったコメントのメモです。

<「私の男」について>

 浅野さん:この役はとてもやりたかった。30代のころ、40代でどういう役をやりたいかを考えていましたが、今回は自分でもとことんやりたいと思えた役でした。
 ちょうどこの撮影が始まった昨年の1月に大島渚監督(代表作「愛のコリーダ」)が亡くなりました。「愛のコリーダ」で主演をされた藤達也さんとこの映画でごいっしょするのは、何かの縁だと思いました。
 
 二階堂ふみさん:ベネチア映画祭のころから、次にやりたい監督はと聞かれるたびに、「熊切監督」と言い続けていました。その願いがやっとかなって、熊切監督の作品に出られました。
 また、桜庭一樹さんは大好きな作家で、「私の男」も出てからすぐに買って読んだくらい好きな作品です。
 
 熊切監督:原作を読んだときに淳悟を演じるのは浅野さんしかいないと思った。二階堂ふみさんとは別の作品のオーディションでみた。みんなハキハキと挨拶するのに、彼女だけはどこか不機嫌そうな雰囲気を醸していていました。そんな彼女が花の役にぴったりじゃないかと思いました。

<撮影時のエピソード>

 浅野さん:
 血が滴る中でセックスするシーンがあります。スタッフさんが風呂桶にお湯を沸かして血糊を用意してくれていたんですが、監督が何テイクもとるので、だんだんと冷たくなりました。最後には凍った水道管を通ってくる水になりまして…。
 二人で抱きあっているのが一番暖かいという状況でした。そんな中で撮ったシーンなので、二人の一体感といったものがうまく描けていたのではないかと思います。
 
 二階堂ふみさん:
 紋別市の撮影現場にいくと、なんと壁がぶちぬいてあって、そこで監督と撮影の近藤さんが笑っていて、「殺される」かと思いました。ほとんど屋外(おそらく零下9度くらい)と同じだったので、凍りつくような感じでした。
 
 「流氷のシーンは寒くなかったのですか」という司会からの質問について
 
 中に寒くないようにスエットスーツを着込んでいたので、そんな寒くありませんでした。
 
 #でも、やっぱり撮影はたいへんだったようです。
 ソース:MSN産経ニュース

----(以下引用)----
 特に意識したのがオホーツクの流氷の表現だ。最初はプールに発泡スチロールを浮かべる案もあったが、撮影1年前に知床で流氷ウオークに参加して、本物でできるのではと感じた。だが氷が接岸するかどうかは風任せ。ギリギリまで少なかった流氷が撮影時には奇跡的に現れ、海岸線をびっしりと埋め尽くした。

 「流氷は何としても35ミリフィルムで撮りたかった。じゃないとただの雪原に見えてしまう。でも一本丸々35ミリで撮る予算はない。それで思いついたのが、東京での場面をデジタルで撮ることでした。フィルムの奥まった感じに対し、東京に出てからは近さが出ればいいなと思ったんです」

 この極寒の流氷の海に花役の二階堂が飛び込むシーンは圧巻だ。二階堂は「今日は死ぬ気で来ました」と言い切ったという。
----(引用ここまで)----


 熊切監督:
 流氷のシーンもうそうですが、花と淳悟が会うあの坂道も凍りつくようなところなのに、浅野さんはシャツにダウンといういでたちでした。かなり寒かったのではないかと思っています。
 
 浅野さん:「剣岳」という映画で山に登っていますから、坂をのぼるくらいなんでもありませんよ。

<小節と違う時系列について>
 司会者:小節は花の結婚前夜から始まり、時をさかのぼっていくかたちになりますが、映画では、ほぼ時系列に沿った形になっています。どんな意図があったのでしょう。
 熊切監督:小説と同じ時系列にしたとき、震災がラストにきます。東日本大震災があったので、小説が別のメッセージを持ってしまいます。ですので、本作では花の結婚前夜で終わらせるようにしました。

 
<私の男は傑作!?>
 司会者 :熊切監督は二階堂ふみさんに「これは傑作になるかも」と送ったそうですが。
 熊切監督:酒の席で送ったんで…。
 二階堂ふみ:メールにはちゃんと「たぶん」とついていました(微笑)




■参考
<キャスト>
腐野 花(くさりの はな):二階堂ふみ
 淳悟が17歳のときに生まれた淳悟の実の娘。苗字は「竹中」だったが、淳悟に引き取られたことによって「腐野」になった。短大を卒業後派遣社員になり、派遣先の社員である美郎と婚約する。

腐野 淳悟(くさりの じゅんご);浅野忠信
 花の養父。美形であるため女出入りが激しい。紋別では海上保安官主計士だったが、東京へ出てからはバイク便ライダーになり、その後無職になる。

大塩 小町(おおしお こまち):河井青葉
 淳悟の元恋人。花のことを嫌っている。若いころは北海道拓殖銀行の地元の支店に勤める美人だったが、銀行が破綻したあと東京で暮らす。年をとると肥満化していった。

尾崎 美郎(おざき よしろう):高良健吾(ただし、ラストシーンでは別の人)
 花の婚約者。勤務する会社の親会社の専務の息子。複数の女性と関係を持っている。

大塩さん(おおしお):藤竜也
 北のほうで地元民に慕われていた老人。「親父さん」と呼ばれている。

田岡(たおか):モロ師岡




 
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