【TOKYO FILMエX】オープニング~「アリラン」(監督 キム ギドク) | いろいろといろ

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第12回東京フィルメクスが開催されました。
震災で、今年はイベントはないかと思っていただけに、主催者の方々には意味あるイベントを開催していただき、感謝の極みです。

■オープニング
審査員の方々の登壇。代表して「Cut」のナデリ監督が挨拶しました。
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■アリラン
Q&Aの様子です。
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「アリラン」は2008年から映画製作に携われなくなったキム・ギドク監督の自叙伝的な映画です。ある事故があって、メガホンをとることができなくなった監督は2008年から、韓国の人里離れた田舎にある家で、世間と距離を置いていました。そのときに取りためた自分の映像を1本の映画としてまとめたのが「アリラン」です。

 最初、素の監督の姿が出てきます。隠遁生活のさまが映像で流れますが、その姿はまるで、気がふれたかのようです。

 屋内にいるのに、テントの中にPCと寝床を置き、外に汲み置いた水で手や顔を洗い、またその水でコメを研ぎ、台所の窓には、古くなったトマトが10数個並んでおり、監督はその古くなったトマトを無造作に食べていたり。

 実は2008年からある事件をきっかけに、人を信頼することができなくなり、この隠遁生活を送ることになったと監督自ら独白。棚には栄光の日のトロフィーやらポスターといった空虚な遺物が並んでいます。
 
 その中で一本だけ、監督が涙した映画があります。それは、「春夏秋冬そして春」でアリランをBGMに自分が仏像を持って山を登る姿。

アリラン アリラン アラリヨ
アリラン峠を越えて行く
私を捨てて行かれる方は、
十里も行けずに足が痛む。

※ポスターのメインモチーフは、踵がひび割れた痛々しい監督の両足です。

 後からのQAで、「なぜそのシーンの監督の反応を映画に入れたのか」という質問がありましたが、監督はこのように答えていました。

「私の映画はほとんどが政治的な映画でしたが、『春夏秋冬そして春』だけはそうではない映画です。実はまさか自分がこの映画を見てあんなに泣くとは思いませんでした」

 監督が撮ってきて唯一「空虚」でなかったのものが、『春夏秋冬そして春』の中にあったのかもしれません・・・・。

 人生のどん底にいるときにどうやって這い上がるか・・・映画を見ながらそればかりを考えていました。

 ところで、この『アリラン』のクランクアップをしたのが今年の1月でしたが、いまだにその家にテントを張って住んでいるそうです。これからどんな作品を撮っていくのか、今回のQAでいろいろお話を聞いて、楽しみになりました。