真夏の方程式 Ⅸ
「ほら、ここ見て」
史が指差したのは、パンツの両膝の脇だった。
大きなファスナーが付いている。
「開口部がめちゃくちゃ広いのよ」
「なるほど」
「前の事故のとき、お父さんの膝を守ったやつ、あるでしょう?」
「ああ。硬質プラスチックのニーパッドな。確か、あれもワークマンで買ったやつだったな」
「そう。それを再利用するの」
「まさか、あの外付けのニーパッドが中に入るのか?」
「入りますとも」
史は胸を張った。
「ちゃんと寸法を測ったから。余裕で入るわ」
「なるほど……」
俺は思わず感心した。
「あれが入るなら鬼に金棒だな」
実際、あのニーパッドは前回の事故で見事に役目を果たしてくれた。
あばらは折れた。肘もやられた。
だが、膝だけは本当に無傷だった。
あれには感謝しかない。
「よし。パンツも決まりだな」
史は満足そうにパンツをカゴへ放り込んだ。
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