K-3(下り編)。
頂上の展望台に森君を残し、俺はひとり、K-3を下っていく。
強いて言えば、俺にとって CB650R e-clutch は、「下り」のほうが神経を使う。
この道を走るのは今回が初めてだ。上っては来たものの、下りとなると話は別。
CB650R e-clutch のメーターに目をやると、ちょうど「3,000km」を超えたところ。
新しい相棒にも、ようやく“慣れてきた”と言っていいかもしれない。
このバイクのコーナリング性能が優れているのは間違いない。
しかし、下りの連続ヘアピン……そんな場面は、俺には記憶がない。
同じようなカーブが、左右交互に飽きもせず襲ってくる。
「コースを覚える」という感覚もない。ただ、目の前に現れるカーブを一つずつ、なんとかこなすのみ。
「ちょっと楽しくなってきたかも」
そう思い始めた頃には、もう麓の神社前の駐車場に着いていた。
老眼鏡なしで新聞を読む——そんな、ラストトライに向かう。
俺は CB を K-3 の頂上に向けて、再び走り出した。
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