山ちゃん、生きてたんだね。
4月1日付で地域戦略部に異動して以来、目まぐるしい日々が続いていた俺だが、ようやく一息つける週末がやってきた。
天気もいいし、久々にK1(高野山付近にある峠道)でも流してみるか――そう思い立った俺は、CB650R E-clutchに火を入れた。
4月にしては結構肌寒く、K1に向かう道中でもすれ違うバイクはわずかだった。
やがて、K1のライダー休憩所が近づいてくる。
そこにいたのは、お馴染み、芸人ミヤゾンそっくりな、Kawasaki Ninja ZX-25R乗りの、あの森君だった。
俺は、おもむろに森君のバイクの横にCBを停める。
「よお、森君、久しぶり!」
森君はちょっとびっくりした顔をして、ワンテンポ置いてから叫んだ。
「山ちゃん、生きてたんだね!きっと、バイクで事故って死んだんだと思ってたよ!」
「なんだよ、藪から棒に。仕事が忙しくて、ちょっと来れなかっただけだって。」
「だって山ちゃん、おじさんのくせにバカだから、絶対死んだと思ったもん。」
「おいおい、ずいぶんな言い草だな。」
俺は苦笑いしながら、森君の人懐こさに何度も救われたことを思い出していた。
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