オートバイをもう一度(142) | cb650r-eのブログ

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理事長が行きたい場所。

 

1時間ほどして、井村さんが俺の机の前に立った。「事務長経由で、宇都宮理事長のアポが取れました。3月19日、木曜日、午後1時、場所は大阪北病院の理事長室です。あと…」 「あと、何だ。」
「理事長が行きたい場所があるそうで、車を出すから、運転をお願いしたいとのことです。」
「行き先は?」
「それは…おっしゃっていませんでした。」
「分かった。まぁ、予想はつく。」

その時、田下部長が俺の肩を軽く叩いた。「山本次長、ちょっといいか?」
「はい。」と答え、2人で小会議室に向かう。

「山本次長、宇都宮理事長と、知り合いなのか?」
「いえ、おそらく向こうは私のことをご存じないと思います。」
「お前の親父さん、今も元気なのか?」
「いいえ、私が大学に入る前の3月に亡くなりました。」
「随分、早くに亡くしたんだな…。」
「はい。」

「医者だったのか?」
「はい、和歌山県立大学医学部で宇都宮理事長と同級生でした。葬儀では、宇都宮理事長が弔辞を読んでくれました。」
「なるほど、それで…。」
「母の話では、父の唯一の親友だったそうです。」
「親父さんの名前は?」
「頴二です。」
「宇都宮理事長は…『清悟』。」田下部長が呟く。

「医療法人…頴悟会か。」
「良くできた話だな、これは…。」

「実際に法人化するとき、一緒にやろうと、熱心に誘われていたらしいです。」
「そうか。」

「アポは3月19日、木曜日、午後1時。宇都宮理事長と行く場所があるので、遅くなると思います。ここには戻らないでしょう。」
「まさか、3月19日…。」
「父の命日です。おそらく和歌山にある父の墓参りに行くつもりだと思います。」
「そういうことか…。」
「すべて了解。よろしく頼む、山本次長。」

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