オートバイをもう一度(141) | cb650r-eのブログ

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その時はこう伝えてくれ。

 

しばらくの沈黙が続き、田下部長が重い口を開いた。「万策尽きたか…。」
「山本次長、何か『打ち手』があるか?」

俺は目をつぶり、天井を見上げた。その先に浮かんでいたのは、あるシーンだった。
それは、親父の葬式で、若き日の宇都宮理事長が弔辞を読んでいる場面だった。
俺はふと、自問した。......恩を仇で返すことにならないか。

「井村さん、うちのプランに自信はあるか?」
「もちろん、ベストだと思います。」
「そうか…。」

決意を固めた俺は、静かに言った。「井村さん、アポを頼む。」
「事務長ですか、それとも院長ですか?」

「いや、理事長の宇都宮 清悟 先生だ。今月であれば、いつでも、何時でもいい。もちろん、休日でも構わん。」

「理事長とは我々もお会いしたことがなく、そもそも82歳のご高齢で、会っていただけるかどうか…。」

「そうだな。だが、その時はこう伝えてくれ。山本 頴二の息子、山本 直太郎が会いたいと。」

田下部長が顎に手を当て、目を閉じたまま言った。「山本次長、この件に関しては、俺の全権をお前に委任する。」
「分かりました。ありがとうございます。」

そう言って、4人は重い空気を背負いながら会議室を後にした。

 

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