運も実力のうち。
ここからの話には、壮大なドラマは無い。初芝病院は、1年半後に回復期リハビリ病院として再スタートを切った。病院名は変わったが、黒田院長は、三顧の礼で留任した。医療法人カジマの関連の医療法人が新たに設立され、黒田院長が理事長に就任した。
調印式は、帝国ホテルの会議室で行われた。予想通り、かなりのマスコミが取材に来ていた。記者会見後に、帝国ホテルで関係者による立食パーティーが開かれ、みんなで祝った。全員がWin-Winの関係で、俺が知る限り、最高のM&A案件だった。
パーティーの途中、俺は声をかけられた。「山本君、今回は本当にありがとう。」カジマの井上理事長だ。「こちらこそ、大変ありがとうございました。」俺は恐縮しながら返事した。
「君はすごいねぇ。今の職場がイヤになったら、いつでもうちに来なさい。部長待遇を保証するよ。」
「はぁ、今回は運が良かっただけで…。」
「そうか、そうか。でも山本君、運も実力のうち。この業界は謙虚だけじゃダメだよ。ハッタリも大切だ。」
「肝に銘じます。」
「今後も、よろしく頼むよ。」
「はい。よろしくお願いいたします。」と井上理事長の背中に向かって俺は言った。
会場で、ひと際ギャーギャーうるさい女性がいる。
「あ、有永副社長。」
なるべく近づかないように...しときましょ、ここは。
その後、医療法人カジマとの新しい取引が始まった。もちろん、規模は大きくはなかったが、それでも俺たちにとっては大金星だった。

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