フロッピーディスク。
その時、続いて小太りの中年男性が入ってきた。
「総務担当の室田です。」と平木支店長が紹介する。
室田は手に10cm四方の透明なプラスチックの箱を持っていた。中にはフロッピーディスクが5枚入っている。
「撤退マニュアルと雛形をお持ちしました。コンティンジェンシープランも含めて、すべての雛形がWordとExcelで入っています。こちらでデータをコピーしていただきたいのですが、もちろん『対外秘』でお願いします。」
「分かりました。」
俺は持参した、初芝電産の“Let’s book”を取り出した。秋葉原で40万円も出して買ったWindows95搭載モデルだ。東京を出る前に、やはり買っておいて正解だった。
「ほう、山本やるねぇ。俺のSHARPのザウルスじゃ太刀打ちできないな。」と小川部長が感心する。
「山ちゃん、ヤンエグ!」と有永副部長がからかう。
「茶化さなーい。」と俺は軽くいなした。
データのコピーには少し時間がかかったが、俺は5枚のフロッピーディスクのデータを無事に自分のPCに取り込んだ。
「ありがとうございます、平木支店長。」と小川部長が礼を述べる。
「謝々――、平木先生――!」と有永副部長も軽口を叩く。
平木支店長がニヤリと笑いながら言った。
「よし、お昼はみんなで飲茶に行きましょう。富田、室田、みんなで行くぞ。飲茶は人数が多いほうが楽しいからな!」
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