Tomy。
四菱銀行香港支店は、香港上海銀行(HSBC)ビルの中にある。その8階フロアが四菱銀行の香港支店だ。ディーリングマシンの性能も凄まじく、うちの香港支店の機材など、まるで足元にも及ばない。
真夏にもかかわらず、香港の建物内は冷房が強力に効いており、スーツ姿では少し寒いと感じるほどだ。
応接室に、平木支店長が入ってきた。「Smoking or Not smoking?」
すかさず有永副部長が「禁煙に決まってるでしょ!」と声を張り上げた。
「分かった、分かった。」
「みなさん、よくいらっしゃいました。有永、久しぶりだなぁ」
そこに、一人の若者が入ってきた。どことなく香港人のような雰囲気があるが、どうやら日本人のようだ。名刺を見ると「Tomy」と書かれている。
「富田といいます。」やはり日本人か。
「元住銀行のシンガポール支店から、うちが引き抜いた。凄腕のディーラーだよ。」と平木支店長が言う。
「ほう、それは心強いな。」と小川部長が応じた。
富田がぶっきらぼうに言う。「元住香港には知り合いも多いので、うまくやりますよ。電話で値決(ねぎ)めして、SWIFTは資金の付け替えだけに使います。」
「ただ……。」
「それでも、市場で噂が立つかもしれませんね。尾ひれ、背びれがついて。」
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