アルコール依存症の治療 | 断酒てへ日常

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断酒を続けること、そのために断酒例会に毎日出席を続ける日々

 昨日の記事に引き続き「アルコール依存症ってどんな病気?」の第5項目

「アルコール依存症の治療」 です。この一部は以前2回紹介していますが、この項目全部を通してここに掲載します。



アルコール依存症の治療
 

アルコール依存症の治療は、入院であれ通院であれ、 その目的に よって大きく三つに分けることができます。

1. 離脱症状の治療

イ. 軽い離脱症状の治療
 治療するには、まず一旦酒を切らなければなりません。 数日また はそれ以上の間、 連続飲酒を続けていれば、 酒を切ったとき多少と も離脱症状が現れます。 手指や全身の震え、 脱力感、 発汗、 動悸、 吐き気、食欲不振、下痢、不眠、血圧上昇などが、 その症状です。 また、脱水症状を伴っており、 何日も食事を摂っていないので、栄 養障害を起こしており、 こんなときは生命の危険もありますので、 専門医療機関で治療を受けねばなりません。 軽い離脱症状はふつう 一週間前後でよくなります。

ロ. 意識障害、 幻覚、妄想の治療
 酒が切れてくると、 まず離脱症状が現れますが、24時間以内に全 身のひきつけ (離脱症状) を起こすことがあります。 さらに2~3 日後には意識がおかしくなり、 うわ言を言ったり、 幻覚が現れて激 しく興奮します (せん)。 このようなせん妄状態は、 普通3~4日 でおさまり、正常な意識に戻ります。
 また、時には誰もいないのに人の声が聞こえるような幻聴が現れ、 数週から数カ月間続くこともあります。 このような精神症状が現れ たときには入院治療が必要になります。 専門の医療機関に受診して、 治療を受けて下さい。

2.合併症の治療

 アルコール依存症の場合、 ほとんどの人が消化器や循環器、 神経 疾患など、からだの合併症を起こしています。 また、しばしば精神 疾患を合併している人もいます。 酒をやめると同時にこれらの合併 症も十分に治療し、 心身ともに健康を回復することが大切です。 ア ルコール依存症の専門医療機関ではこれらの合併症の治療も行って います。
 肝硬変、高血圧、糖尿病、脳萎縮、 神経疾患などは、かなり末期 にならないと自覚症状が出ないので、自覚症状がなくても、念のた め早い時期に受診して検査を受けておくにこしたことはありません。

3. 断酒を続けていくための治療

イ. 断酒を決心するには
 アルコール依存症を克服するには、まず酒をやめようという気持 ちをしっかりもたなければなりません。
二日酔いで苦しいとき、 離脱症状からぬけ出したあと、 肝臓をわ るくしたときなどは、 誰でも一時的にもう酒はやめようという気持 ちになりますが、 からだが元気になってしばらくすると、 少し位な らよいだろうと思って、また一杯の酒を口にしてしまいます。しか し、アルコール依存症になってしまったからだは、ものの数カ月も しないうちにブレーキが効かなくなり、 再び連続飲酒に陥ってしま います。
 こうして、 何度となく節酒を試みますが、 結局は失敗に終わり、 自分自身を責め、 自己嫌悪に陥り、やけになって一層酒をあおると いう悪循環を繰り返すようになります。 このような蟻地獄から抜け 出すには、まずアルコール依存症という病気についての正しい知識 を身につけなければなりません。
 このまま病気が進んでいくとどうなるか、結末は生物的または社 会的死しかないということをはっきり見きわめ、 完全に断酒する以 外に方法がないことをよく知らなければなりません。そのためには、 専門の医師、精神保健福祉士、保健所の精神保健福祉相談員、保健 婦、断酒会の酒害相談員らに気軽に相談し、 適切な助言を受けるの がいちばんの早道です。
 家族も、本人が酒をやめたい気持ちになっているチャンスを逃が さず、相談に行くことをすすめ、 本人に同伴して、 すべてを打ち明 けて相談に乗ってもらうことが肝心です。 治療のはじめに最も大き な影響力をもっているのは、 共に生活している家族です。 治療は家 族の熱意、愛情、 理解によって大きく左右されますから、 本人より も一足先に適切な治療法を勉強しておこうというぐらいの心構えが必要です。

ロ.断酒を継続するには

● 適切な方法を知る
 アルコール依存症に共通した基本的な特徴は、 ひとたび酒を口に すると、 とまらなくなるというということです。 そして、 このよう に一旦いわば体質化してしまった傾向は、たとえ何年間酒をやめ続 けていても変わらないのです。この点に、アルコール依存症の治療 のむずかしさがあります。 例えば、 数年間完全に断酒していた人が、 ふとしたきっかけで再び飲酒するようになると、数カ月も経たない うちに、以前のような離脱症状を現すような状態になってしまった 実例は沢山あります。 こうして再発を繰り返しながら、 病気はますます進行して行くのです。言い換えれば、一旦アルコール依存症に なると、適量をきめて飲むということ (節酒) ができなくなってし まうのです。 そんな意味では、 この病気は非常に治りにくい病気だ と言えます。
 しかし、決して悲観することはありません。 酒さえ飲まなければ、 健康な人となんら変わるところはなく、 何の問題も生じてこないか らです。断酒を継続していくコツさえわかれば、 ずっと酒をやめ続 けて行くことができます。 こんな病気はほかにも沢山あります。 例 えば、糖尿病の場合、 甘いものを食べると血糖値が上昇し、病気が 悪化しますが、 糖分を摂り過ぎないようにすれば血糖値もふつうで、 健康人とまったく変わりありません。 しかし、一年間糖分を制限す れば、その後また甘いものが食べられるようになるかと言えば、 決 してそうではありません。 そんな意味では糖尿病が完全に治るとい うことはないのです。
 だから、アルコール依存症の場合、断酒を続けることが治療上もっ とも重要なのですが、 実はこれが患者さんにとっては非常に難しい ことなのです。 しかし、その方法を知り、 知恵をはたらかせて実行 し、家族や職場が理解して協力していけば、誰でもできることなのです。

●ひとりではやめ続けられない
 さて方法ですが、 しばしば意志を強くもって一人で断酒しようと する人があります。 しかし、そのような方法が労多くして実り少な いものであり、 まずほとんど成功する見込がないことを知らねばな りません。 数多くの患者さんがこのやり方で何度も失敗し、 不幸な 結果を招いている事実がそのことを証明しています。 一人で頑張っ てみても、せいぜい半年から一年ぐらいまでは継続できても、それ 以上続けられる人はほとんどありません。
 なぜ一人ではやめ続けていくことができないのでしょうか。それ にはいろんな理由がありますが、 根本的には、 酒を飲みたい欲望を 抑えつづけ、苦しみばかりが大きくて、酒をやめた喜びを見出せな いからだろうと思われます。 また、 アルコール依存症の人は、自分 でも酒をやめなければと思いながらも、 何度となく失敗を重ねてい るので、挫折感に打ちのめされ、 自己嫌悪に陥り、 絶望的となり、 心はまったく孤独になってしまっています。 だから、孤独感からぬ け出して、健康な心をとりもどし、酒をやめた喜びを見出すことが できなければ、到底酒をやめ続けて行くことはできないのです。

●仲間といっしょに心の治療
 そのための、いわば心の治療をしていく場として、 断酒会やAA というグループがあります。 断酒会または AA とは、 アルコール依 存症の人や酒害に悩んでいる人達が集まり、酒をやめ続けて健康を 回復し、明るい家庭を築き上げるために、 同じ悩みをもつ仲間がカ を合わせ、支え合い、 励まし合っているグループです。
 これらのグループは、宗教や政治団体などとは一切無関係で、た だ酒をやめたい人達が自発的に参加している治療的な集団ですから、 酒をやめたい人なら誰でも気軽に参加できます。 また、 断酒をおし つけたり、説教したりする会ではありません。 お互いに自分の体験 を語り合いながら、 各人が断酒の気持ちを新たにし、一日一日の断 酒を喜び合っていく会ですから、 その雰囲気は暖かく、 家族的です。
  このような会に参加して仲間ができれば、 孤独から解放され、酒 をやめ続けていく自信が生まれ、 希望を抱き、仲間や家族とともに 断酒の喜びをかみしめることができるようになります。
断酒会、 AA についてくわしく知りたい方は、 専門医療機関や、もよりの保健所や酒害相談所、断酒会、 AA にお問い合わせ下さい。

●抗酒剤の有効な使用
 とくに断酒生活をはじめて数カ月の間は、一瞬一瞬が酒の誘惑と
の闘いの日々が続きます。 朝、 「今日も一日断酒するぞ」という強い 決意で家を出ても、 外ではどんな誘惑が待ち構えているかわかりま せん。運悪く飲み友達に出会ってしまったとき、 仕事で思わぬ失敗 をしたとき、レストランに入ったとき、 疲れたときなどに、つい誘 惑に負けてしまうことがあります。 こんな時、 抗酒剤をのんでおく と、誘惑に打ち勝つことができます。
 抗酒剤としてよく用いられているのは、シアナマイドという水薬
です。一日に一回服用しておくと、 24時間は効果があり、 もしもア ルコールを口にすると、 ちょうど酒に弱い人が無理に飲酒したとき のように、 全身真っ赤になって気分が悪くなり、 数時間苦しみます。 このような作用があることを知っておくと、 もしも飲酒したい気分 になっても、薬をのんでいるから怖いという気持ちがはたらき、な んとか誘惑から逃れることができます。 こうして徐々に断酒の力を つけていくことができるのです。
 また、抗酒剤をのまなくても大丈夫だと思う場合でも、 薬をのむ
ことで家族が一日安心して過ごすことができれば、家庭も明るくな
ります。 そんな二次的な効果を期待して、 抗酒剤を服用している人
もいます。
 抗酒剤は劇薬ですから、 医師とよく相談の上使用して下さい。 と きには、本人に内緒で抗酒剤をのませようとする家族がありますが、 それは危険ですからやめて下さい。

 


 抗酒剤の有効な使用という項目がありますが、この記事よりだいぶ後になって、断酒に有効な薬剤が開発されてきました。その一つがレグテクト(アカンプロサート)で飲酒欲求を起こしにくくする効果があります。そしてもう一つがセリンクロ( ナルメフェン塩酸塩水和物 )アルコールによる酔いを抑えることで、飲酒量を減らせるとされる薬です。これらも薬も断酒を助けることに効果があります。これらは別途調べてください。
 

 このあと

「女性のアルコール依存症」

「家族の方々へ」

を掲載する予定です。

 


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