(*このテキストには、映画のストーリーか含まれています)
『はなれ瞽女おりん』
公開 1977年11月19日
製作会社 表現社
配給 東宝
【スタッフ】
監督・脚本:篠田正浩
脚本・台詞:長谷部慶次
製作:岩下清
原作:水上勉
撮影:宮川一夫
音楽:武満徹
美術:粟津潔
録音:西崎英雄
【キャスト】
おりん:岩下志麻
男(平太郎):原田芳雄
一瀬たま(瞽女):樹木希林
テルヨ(瞽女のおかみ):奈良岡朋子
ツギ子(瞽女):神保共子
カネ子(同):横山リエ
ヤス子(同):宮沢亜古
ミツ子(同):中村恵子
老婆:原泉
おりんの少女時代:嶺川貴子
斉藤(薬売り):浜村純
伊助:加藤嘉
炭焼男:殿山泰司
袴田虎三(憲兵軍曹):小林薫
今西万太郎(刑事):桑山正一
山下(香具師):山谷初男
小杉(香具師):不破万作
野次馬の男:伊達三郎
トンネル工事の男:松山照夫
助太郎:西田敏行
【作品概要】
水上勉が1975年に発表した同名小説を名匠、篠田正浩が脚本と監督を務め映画化した作品である。
【あらすじ】幼い時に母にすてられ瞽女になったおりんは、助太郎の求めに応じてしまい、はなれ瞽女となり、流浪の旅にでる。ある日、おりんは脱走兵の平太郎と出会うが、平太郎はおりんを抱こうとしない。二人は兄妹として一緒に旅をすることにする。二人が兄妹でないと感づいた斎藤は、おりんに言い寄り、平太郎と対立する。
【コメント】
母に捨てられ、幼少の時に瞽女となったおりん。瞽女の世界では、身籠ることは御法度だったが、自らの欲望に負け、男に身を任せてしまう。はなれ瞽女となってからも、持って生まれた美貌が災いし、言いよるあるいは強引に関係を迫る男が後を絶たない。しかし、身銭を貰い生活を凌ぐ。ところが偶然、最愛となる男と出会う。
複雑な心情と生い立ちを持ち、強さと弱さを併せ持ち、どこかで道を踏み外したままで、幸福を掴み切ることが出来ない薄幸の瞽女を岩下志麻が熱演している。
脱走兵の平太郎は、国家に抵抗を試みるが、身を隠し逃走を続けることしか出来ない。おりんを心底愛すが故に、哀れなおりんに男女の関係を持つことを拒否する。その屈折した愛が、さらなる悲劇を生む。
設定を他国に置き換えることは不可能ではないが、やはり、こう言った煩悩や情念、不幸の螺旋は、邦画ならではの世界だ。戦争に突入する当時の日本の雰囲気を、迫力を感じさせる映像美で篠田正浩は描き出している。篠田は、時代を代表する名匠の一人と思う。



