ここに書いてあることは全部識ってたわい
   立川談慶「教養としての落語」を読む


 子供の頃から落語を聴き、テレビやラジオの落語番組をエアチェックし、カセットテープにため込み、収入を得るようになってCDやLD、後にDVDを購入するようになり、1000枚以上のデジタル映像、音源を持ち、落語関係の書籍も200冊は超える私には、談慶師匠のこの本に書かれていることは全て識っていました。
 ただ、識っていることと、それを整理してわかりやすく提供することが出来ることとは、雲泥の差があります。
 この本を購入しようと思い立ったのは、今、落語をまともに聴いたことない方のためのレッスンを開始し、先ずは圓生師匠の格式高い至芸に触れていただき、黒門町も追加した後、私が勝手に「基礎落語」と呼んでいる万人に知れている噺〜「時そば」「饅頭怖い」『寿限無」「目黒のさんま』などをとっかかりとして数多くの作品を聞き、覚えて行ってもらう所まで来ていました。そして、その次のステップで、四天王などの世代の高座を聴いていただき、現在に繋がる落語の現状を知っていただくこととしていました。その上で、最後のステップで、落語とはなんぞや・・・立川談志師匠の渾身の作「現代落語家論」を副読本にして・・・最終的な落ち着き場所は、◎◎◎ですという展開を考えていたのです。この本は、その目論見に見事に応えてくれるものでした。ここまで整理できることはすばらしい。
 難があるとすれば、6代目三遊亭圓生師匠及び3代目三遊亭金馬師匠の評価が低いこと、上方落語の紹介が物足りないことだろう。ここを改善すると紙幅が増えてしまいかねないのかも知れないが・・・。