My鉄道ライブラリーには、鉄道を題材とした「絵本」も何冊かあります。
私の息子たちも、電車や新幹線をみて鉄道に興味を持ち、絵本などを見せると目を輝かせてみていました。
残念ながら我が息子たちは、大人まで持続することはありませんでしたが……。
今年の新たな取り組みとして、私の所蔵する「鉄道絵本」から、不定期ですが、紹介してまいります。
私の撮影した写真も含めたり、文章から一部を抜粋しながら紹介してまいりますので、子供たちに夢をあたえてくれ、大人が見ても楽しい絵本のレビューを興味があったらご覧いただければ幸いです。
その1回目は、
“いわむらかずお著
「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」
株式会社偕成社発行”
を紹介いたします。

『秋の日ぐれは、はやく、まだ、五時すぎだというのに、あたりは、もう くらくなっていました。
この小さないなか町の駅は、駅員のいないむじん駅です。ホームで、次の列車をまっているのも、ぼくだけのようです。
やがて、時間どおりに、赤いディーゼルカーがおでこに明かりをつけてやってきました。たった二りょうれんけつです。

これが、下りのさいしゅうれっしゃです。まだ夕がたなのに、ずいぶん、はやい、さいしゅうれっしゃだと、おもうでしょうが。なにしろ、この駅をとおるれっしゃは、上りも、下りも、一日に五本ずつしかないのですからしかたがありません。
どのくらい走ったでしょう。ふと目をさますと、れっしゃのなかはしずまりかえっていました。にぎやかにはなしていた高校生たちも、おばあさんたちも、いつのまにかいなくなっていました。どうもおきゃくはぼくひとりになってしまったようです。
そのときだれもいないとおもっていたれっしゃのなかで、はなし声がきこえたような気がしました。だれかがひそひそばなしをしているようなかすかな声です。ぼくは目をこすりながらまえのボックスをのぞいてみました。
「ところで、チュー、きいたところによっと、らいねんは、ねずみどしだちゅんだ、チュー」
「そりゃ、にんげんがしゃべってることだんべ、チュー。らいねんいちねんかんは、にんげんがおれらねずみのこといろいろ考えてくれるちゅうじゃねぇけぇ、チュー」
「どうせ考えてくれるちゅうなら、おれらのいけんもきいてくれねえかなあ、チュー」
「そりゃぜいたくというもんだ、チュー」
「そんだこというが、チュー、アメリカやイギリスちゅう国じゃ。いっしゅうかんにいっぺん、ねずみの日があるんだと、チュー。アメリカから来たちゅうねずみにきいたはなしだ、チュー。うそじゃねえどお、チュー」
「おめえ、からかわれたんだべぇ、チュー。えいごで火曜日のこと、チューズデーというかんな、チュー」
ぼくはおもわずふきだしそうになって、あわてて口をおさえました。
そのときれっしゃがゆっくり駅にとまりました。
てっきりのってくる人はいないだろうおもっていると、ドアのあく音がしました。いすのわきから、そっとのぞいたぼくは、おもわずいきをのみました。
「おばんです。ブォッ」
「こんやはごくろうさんでチュー」
「ところで、こん夜のよりあいのぎだいだがよ、チュー、おめえさんら、どうおもうだね、チュー」
「そのことだけんどよ、ブォッ、おめえらにはどうにもなんねえことだんべ、ブォッ。ようするに、おれらの命は、にんげんしだいということでねぇけぇ、ブォッ」
「ことしはいのししどしだったというのにブォッ、かわいいおとうとは、にんげんのはたけでさつまいもを食ったばっかりに、にんげんにころされちまった、ブォッ」
目になみだをいっぱいためてはなしています。
「おめえ、まだわかんねえのけぇ、チュー。いのししどしだのねずみどしだのいったってにんげんがおれらのこと考えてくれるちゅうことじゃねぇんだぞ、チュー」
れっしゃは、また、つぎのえきでとまりました。
「やあ、おめえか。しばらくだなや、チュー」
「おれのかかあだ、コッ」
「ほほう。おまえさんたち、いつけっこんしたんだあ、チュー」
「じつは……、コッ」
そしてつぎからつぎへと、どうぶつたちが乗ってきて、れっしゃのなかは、まんいんになりました。
とつぜん、きつねがちゃぼとくじゃくにおそいかかりました。
それをみていたくまが、
「ばっきゃろ、フウッ。こん夜は、どんなことがあっても、手をだしちゃなんねえと、あれほどいったのに、わすれたんけえ、フウッ」
くまがきつねのえりつかんで、どなりました。
「いいか、こん夜のよりあいはな、おれら生きもんが、みんなでちえだしあって、これからのことかんがえてみっぺえちゅうことだど、フウッ。ふだん食ったり、食われたりのあいだも、こん夜だけは、なしにするちゅうやくそくだっぺ、フウッ」

そしてれっしゃははらっぱにとまりました……。』
いわむらかずお著「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」偕成社発行 より
全国学校図書館協議会選定、日本図書館協会選定、サンケイ児童出版文化賞受賞。
定価 2000円+税
このようなかたちで、鉄道にまつわる絵本を紹介してまいります。
興味をもたれた方は、Amazonなどにも安い古本としても出ていますので、子供さんなどに読み聞かせするのもよろしいかと思います。
今後の「My鉄道ライブラリー」鉄道絵本をよろしくお願いいたします。