メンクイ
ぼくは無類のメンクイだ。
といっても、異性の器量よしを好む「面食い」ではなくて、粉性ホソモノを好む「麺食い」である。
粉モン好き大阪人+小学2年のときのカップヌードル誕生の衝撃が重なっているせいもあるだろうけど、同世代の大阪人の中でも、相当な麺食いに入るはずだ。
今思えば、大学生の頃の二つの出来事。そのとき麺食いの歴史が動いたのだ!(大袈裟だけど)
一つは、蕎麦屋で昼下がりに「そば焼酎のそば湯割り」で板わさなどをつまみ、蕎麦でしめるご隠居を見て、「粋だなあ、こんなご隠居になりたいなあ」と思ったこと。
もう一つは、ミナミで飲んだ後、当時、道頓堀1店しかなくて常に行列の『神座(かむくら)』のラーメン(金龍もブームだった)を食べて、コンソメのような上品なスープに衝撃を受け、以来、飲む+ラーメンが“パブロフの犬”化し、さらに美味い麺へと欲求が高じたこと。
それからはたとえ海外であろうと、どこに行っても麺を求める探究心が始まった。ということで、ぼくの「麺」への「ツルツルなるおもい」と「ツレヅレなるおもい」をのたまってしまうのである。
★★★麺に“ドS”なフランス人
フランス人はほうれん草を歯ざわりがなくなるまでクタクタに茹でる。スパゲティも同様で、「ナポレオンの辞書に不可能はない」ように、「フランス人の辞書にアルデンテはない」。ピゼリアでは、無残にもスパゲティをナイフでマカロニサイズまで切り刻んでからフォークですくって食べるフランス人を時々見た。さらにパリのラーメン屋では、最初にれんげでスープを全部飲んでから麺を食べるフランス人も時々見た。あまりの仕打ち、麺への愛がないのか。
★★★お客さまに“ドS”なイタリア
日本人にとってはパスタ=ほぼスパゲティだけど、イタリア人にとってはショートパスタとか平麺とかラザニアとかさまざまである。スパゲティ・アラビアータが食べたいと思ってもアラビアータはペンネしかなかったりする。店が「このソースにはこの麺」と決めた組み合わせでしか食べられないことが多くて、結構ストレスがたまるのである。
★★★すごい!けど美味くない中国の麺
セルフ式の大衆食堂の約60円の激安ラーメンでも、注文ごとに生地の塊をアコーデオンを弾くように伸ばして瞬時に麺を作る。「刀削麺」も幻ではなく、あちこちの屋台で安く食べれる。ちょっと高級な麺専門レストランでは、肩にかついだ生地の塊から指先で紡ぎだす30メートルの麺一本だけの「一根麺」というのもあった。しかし、残念なことにそれほどまでの麺作り技術に対して、スープやつけだれには情熱がないようで、あまり美味しくない。残念!
★★★韓国製インスタントラーメンは日本を超えた!?
日本が生んだ偉大な文化、インスタントラーメン。袋入り麺に限れば韓国製のほうがモチモチとしたコシがあって美味いと思う。ただし、スープは激辛でとがっている。お湯を少し増やし、合わせ味噌を加えると丸みと深さが出ておいしくなる。最近はスーパーでフツウに韓国の『辛』ラーメンを売っていて入手しやすくなったが、ぼくは韓国・中華系食品店にしかない『辣白菜』の方が好きだ。
★★★海外に長期滞在する日本人へのお土産は?
ご存じあの棒状のインスタントラーメン『マルタイラーメン』。韓国製がどんなにがんばっても、日本人はあのあっさり素朴な味に心休まるのである。海外が長い日本人なら、ほぼ誰もが喜んでくれるし、気も使わせない便利な手土産である。かさ張らないので突然現地で日本人と会うことになった!というときに備えて持って行くのをおすすめしたい。
★★★ひょうごのご当地ラーメン
ラーメンブームが定着し、各々の店が「たし算」で個性を追求するせいか、スープがコッテリ濃厚化しているように思う。それも美味いけど、澄んだ醤油系スープの『神座』をルーツとするぼくは、西脇市周辺の播州ラーメンが大好きだ。野菜から出た甘みが強い、澄んだ醤油味のスープがたまらない。わざわざそのために西脇まで行けるか!という向きは、変テコな自転車がたくさんで楽しい播磨中央公園(通称:はりちゅう)へ家族ドライブがてらという控えめな態度表明で行くべし。
★★★ひょうごの天然記念麺
播州福崎町に「もちむぎ麺」というのがある。うどんや蕎麦と同様の温・冷のだし・つゆで食べるのだが、蕎麦のような色で、うどんのようなコシの不思議な麺である。うどんの原料が小麦であるのに対し、もちむぎは大麦の一種で非常にレアな品種だそうで、福崎町でも『もちむぎのやかた』という物産センター内のお店だけでしか食べられない(たぶん)。兵庫県民なら一度は試したい。わざわざそのために福崎まで行けるか!という向きは、ご当地で食べるには及ばないと思うけど、『もちむぎのやかた』からネットでお取り寄せもできるようだ。
★★★残念!な出石蕎麦屋
先日、新長田の商店街の出石(いずし=豊岡のほうの蕎麦の名産地)蕎麦屋に入った。店の壁に蕎麦粉や醤油、鰹節、昆布、水にいたる素材のこだわり、石挽きや茹で方など製法へのこだわり、店主の蕎麦への愛情などが延々と書き連ねてあった。うんちくを並べるだけあって、確かにまあ美味いのだけれど、なぜか出石蕎麦のお店なのに、店名が『いづも』(出雲もそばの名産地)なのである。細かいこだわり以前に、なぜお店の名前にこだわらなかったのだろう。
★★★イノチの母そうめん
ぼくはあらゆる麺を愛している。しかし、世間はそうめんに冷たいと思う。お中元でそうめんが届くと大抵の人はテンションが下がるようだ。たしかに、そうめん専門の店は成り立たないし、具によるバリエーションも乏しい。乾麺なので出来立てが美味いわけでもない。実際、本場の小豆島で食べたが、感動的な違いは正直ない。しかし、二日酔いの朝のそうめんの美味さをご存じだろうか。「何も食べたくない」というアンニュイな気分のときこそ美味いと感じる貴重な存在!困ったときに助けてくれるありがたーいイノチの母なのだ!そうめんのやさしさに敬意を表して、今年は鳥取との県境に近い戸倉峠で30mの渓谷をまたぐ日本一長い滝流しそうめんに行きたいと思う。
★★★最後の晩餐に選ぶとしたら
きつねうどんを発祥させた店としても有名な『うさみ亭マツバヤ(松葉家本舗)』であるが、「おじやうどん」という、名の通りのご飯入り鍋焼きうどんが絶品!鶏肉、穴子、きざみあげ、生卵、甘く煮た椎茸など、具たくさんの贅沢で、(たしか)750円と圧倒的なコストパフォーマンスの高さ!船場にあり、なかなか行く機会がないのだけど、最後の晩餐はコレだ。嗚呼麺(アーメン)!
