これまで述べてきたように、ヒトも犬も猫も健康長寿を目指すには、近年ヒトが作った化学物質の摂取を減らすことが大切になります。そして、第2に大切なのは、摂取しても解毒できる身体づくりです。

 

化学物質の摂取を減らすには、食べ物や飲み物に気をつける以外に24時間365日止めることのできない『呼吸』からの摂取に配慮しなければなりません。大人で1日に必要なのは2キロの食料、2キロの水、空気は15~20キロです。大気のコントロールは非常に困難ですが、せめて室内の空気をきれいに保ちましょう。そのためには、室内の床壁天井をできる限り自然素材にしたいです。

 

内装に化学繊維やプラスチックを使った室内では、ハウスダスト中にそれらの添加物であり発がん性や内分泌かく乱が懸念される化学物質が高濃度に含まれてしまいます。

 

さて、ここからは私が診察で経験した『ヒトは大丈夫…でも犬猫は?』症例について挙げていきます。人間には特に症状が無くとも、犬猫ではときに命にかかわるような症状がでてしまった化学物質について、お話いたします。これは、『ヒトは安全』という意味ではなく、『それが高濃度になればヒトも症状がでる』ということです。

 

また、動物はヒトも含めて『個体差』というものがあります。工業製品であるたとえばスマホには個体差はほとんどありません。あったら購入者が困りますから売り物にはなりません。ですが、動物には個体差があるので、その化学物質が高濃度でなくとも、Aさんは大丈夫でBさんは症状が出てしまうことも、もちろんあるのです。

 

また、それらの商品ひとつひとつは『安全性が認められている』ということにはなっていますが、いくつか問題点があります。まず、①家庭内ではそれらの商品を推奨量で使用しているとは限らず、②さらにこれらの商品は複数併用されることもあり、③また短期間の使用ではなく連日何カ月も、あるいは何年にも渡って使用することもあり、、、こうなると年単位で使用した安全性のデータはほぼあまりまりません。そして、④ヒトと犬猫、実験室で使われるマウスやラットは動物種が異なるため、化学物質に対する反応もかなり異なってきます。たとえば同じくらいのサイズであるハムスターとモルモットでも、ダイオキシンのひとつTCDDの半数致死量(LD50)は10000倍も異なります。ですから、実験動物のマウスで安全だったからと言って体重換算で出した安全量がヒトや犬猫に安全とは全く言い切れないのです。

 

【ケースレポート1】

3歳の避妊済み雌猫がある時から下痢になり、あちこちの動物病院で診察してもらったのですが一向に良くなりませんでした。アレルギーかもしれないということでアレルギー食のみを食べてみましたが、全く変化がありません。そのうちに4.6キロあった体重は1年で3.2キロになってしまいました。

 

 

飼い主さんは猫とウサギを買っていましたが、彼らが排泄するたびにそれをふき取ってファブリーズを撒いていました。床はこまめにマイペットで拭き掃除をしていました。ある日、この猫のすぐ横でファブリーズを使用していたところ、激しく嘔吐しだしてやがて下痢が始まりました。飼い主さんはそこで初めて『この子の下痢の原因はファブリーズではないか?』と思い立ち止めてみたところ、見事に下痢が止まりました。実はウサギも下痢が治りませんでしたが、この子はファブリーズをやめても下痢は治らず、8歳で乳癌となり亡くなってしまいました。

 

それから数年がたち、ある日エリエール消臭+(プラス)のトイレットペーパーをネットで購入し、段ボール未開封のままトイレに置いたところ、その猫が再び激しい嘔吐に見舞われ、すぐに返品したところ目に見えて症状が消失したそうです。

 

*こちらの記事は、まいどなニュース2023年08月27日号にも掲載されています。

 

→続く