どこにでもある、4人家族のお話です。
サラリーマンのお父さんに、専業主婦のお母さん、息子が二人。
ごく普通の家庭です。
普通とちょっと違うところは、お父さんが高級官僚であるところ。
お父さんは旧帝大の出身であり、自分の子供たちにも同じ道を歩んでほしいと期待していました。
お母さんもお父さん同様に、とても教育熱心でした。
教育熱心で厳格な二人に育てられた甲斐があり、長男はお父さんと同じ大学を卒業しました。
次男も、両親の期待に応えようと必死に努力した結果、無事に地元の有名進学校に合格しました。
長男は大学卒業後に有名企業に勤め、早々に結婚しました。
長男夫婦は実家に住もうと考えていました。
両親もそのつもりで考えていました。
長男夫婦を迎えるため、家をリフォームしました。
ところが…この幸せなはずの家庭に、悲劇が訪れました。
次男が夜中に、洗面所の鏡の前で、ブツブツと独り言を言うようになったのです。
誰かと会話しているような独り言です。
「息子が狂ってしまった…!」両親は愕然としました。
世間体のある両親故か、両親は次男を家から出さないようにしました。
まさに座敷牢状態。
次男が狂ってしまったことを知った長男夫婦は、実家に寄り付かなくなりました。
…それから、数十年の歳月が過ぎました。
長男夫婦は、どこか遠くの場所に移り住み、子供をもうけて、幸せな家庭を築きました。
もちろん、実家には一度も顔を出していません。
お父さんは、すでに他界しました。
実家に残ったのは、90を過ぎたお母さんと、60を過ぎた次男の二人。
次男はいつもと変わらず家に引きこもり、夜中になると洗面所の鏡で誰かと会話をしています。
その会話は、いつもこの言葉で終わります。
「…。お母さんの言うことは、正しい。」
普通の家庭で起こった、本当にあった怖い話です。