昨晩、珍しく夜に強い雨が降った。
ほんの数日前に3ヶ月かけた家の工事が終わって、庭に突き出した3方を大きな窓ガラスで囲まれた部屋が出来た。
その部屋にいると大きな窓を激しく雨がたたいて、まるで雨に囲まれているようだったので面白かった。そして、少し窓を開くとしっとりとした空気と雨の匂いがした。
今日は晴れたけれど、大きな雲がたくさん空に浮かんでいた。
午後の3時半に犬のペッパーがしきりに散歩へと誘うので、出かけることにした。
昨夜の雨で湿った土が太陽に暖められて、散った葉の匂いなのかユーカリの独特なフクイクとした香りがしていた。
犬がいなかったら、私は近所を1時間半ものんびり散歩したりしないだろう。
犬がいるから、誰と会話をするわけでもなく、急ぐこともなくぼんやりと、歩くことができるし、犬がいるから不審者のようにみられることもない。
1人でぼーっと考え事をしながら歩くことが好きな自分には、犬の存在はとてもありがたい。
カラスはそろそろ家路につく時刻。
塀の上から視線を感じる。
見てる。
犬が止まって、匂いを嗅ぎたがれば、気が済むまでそうさせておく。
だから、私たちの歩みはとてものんびりしたものだ。
犬が止まるたびに、私は空を眺める。
西の空に三日月が輝き出す。
どんどん変わりゆく空の色をじっと見る。
犬がいなければ、私はこんなふうに夕方の空を眺めて、少しずつ冷えてゆく空気を感じることもないのだろう。
もう長いこと、私たちは一緒に散歩しているから、ちょっとウキウキした足取りになったり、のんびりしたり、同じようなリズムと歩調で、まるでリードがお互いの間にないかのような心地よい距離感。
家はもうすぐ。
さあ、今日の晩御飯は何を作ろうかな。