前から、ヨーロッパを電車で旅してみたいと思ってました。
特に、私はビクトリア時代の駅にとても惹かれているので、いろんな古い駅舎をみたいとも思っていた。
クリスマス前、そんな私のバケットリストの一つだった鉄道の旅をしてきました!
朝7時半に近所の駅へ。
まだ日の出前なので、プラットホームから見る空は月が煌々としていて。
軽く痺れるような寒さが、重ね着をした服の外側からジワジワと沁みてくる。
気温を調べたら、マイナス1℃!
ケンブリッジ駅で、バーミンガム行きの電車に乗り換え。
指定された席を探していたら、その一つに若い女性が座っている。
「あの、その席、予約している席なんですが、、、」と夫が声をかけると
「席は、どこに座っても関係ないって言われたけど」との返事で動く気配はなし。
予約されている席は、そのように席の上の電光表示がされているのだけれど
他に、予約されていない席もいくつもあったので、そんな席を見つけて私たちは座った。
別に、他にも席があるのだし、私なら、最初からそこに座らないし、声をかけられたらどくけどなあ。と思ったけれど、私たちも別に、その予約席にこだわりがあるわけでもないし、他にも、居心地の良い席が空いていたので、そんなに気にもせずに、ちょっと、変なの。と思っただけだった。
ところが、5分くらいしたら、その女性が近くに座る私たちのところにやってきて「私の黒い鞄、みませんでしたか?」と聞いてきた。
自分の黒い鞄が見当たらないのだという。
一緒に、座席の下や、他の席も探してあげたけれど見つからない。
彼女は、慌てて、誰かに電話して、ケンブリッジの駅のホームのベンチにないか問い合わせてほしいと言っている。
お金も身分証明も全部入っているし、自分は今、バーミンガム行きの電車に乗っていて、駅に連絡することが出来ないと。
私の娘は、心配して青くなっているし、夫もとても気を揉んでいる。
息子はボケッとしていて、私は、好奇心にかられている。
さらに、あんな対応したから、早速バチが当たってる!とも思っている。
車掌さんに相談するといいかも。そう言おうかな。と思っていたら、ちょうど車掌さんが通りかかって、彼女は声をかけた。ケンブリッジの駅の電話番号を教えてもらい、電話をし、落とし物に鞄が届いていることがわかった。
「あの、二日間位戻らないのだけれど、取っておいてもらえますか?」などと聞いている。
(なんで!今すぐ戻りなよ!)と心の中で叫ぶ私。この状態で見つかったこと自体が奇跡なようなものなんだから、できるだけもう、人の手を煩わすべきじゃないし、まだ電車で2駅しか来てないんだから。
駅の人に、断られたのか、次の駅で降りて戻ることにしたようだった。車掌さんが、次の駅で来た方向に戻る電車は数分で出てしまうので、急いだ方がいいと、丁寧に説明してあげている。
さらに、後で、その電車が少し遅れているようだから、乗り換えの時間は間に合うよ。と教えてあげていて、なんて、丁寧で親切なんだろう。と感心。
彼女は、私たちに「ごめんなさいね。私もびっくりしちゃって、、、」と声をかけてきた。
私たちは、見つかって良かったね!そういう状況に自分もなったことがあるから。などと言って、一緒に喜んで、そして慰めた。
実際、私もイタリアで電車の中で、動揺して、周りの人に助けてもらったことがあるので他人事とは思えなかったことは確かだ。
そんなことがありながら、電車は北へ走り続けた。
昨夜はかなり冷え込んだのか、うちの近所も霜が降りていたのだけれど、車窓から見る外の景色もうっすらと白くて、寒そう。
ケンブリッジの辺りはFen Landとよばれる、海抜の低い、平らな湿地帯を含む土地なのだけれど
冬、雨が降ると、そんな土地は粘土質で水を吸い込まないこともあって、湖のようになることもある。
窓の外にそんな、水を湛えたフェンランドが広がり、電車に並行して大きな白鳥が4羽ほどの群れで
大きな羽をしならせて、飛んでいるのが見えた。
時々、雉や鹿も見ることが出来た。
途中、乗り換えて、今度はLondon North Eastern Railway(LNER)のAzumaという電車に乗った。
名前からして、日本の電車だろうか?と思っていたら、入り口の足を乗せるところに、Hitachiとある。日立って、電車を作っているって知らなかった。
とても、快適な乗り心地で、席も座り心地が良かった。
途中で止まる駅は、古い駅はどこも鉄の装飾がとても素敵で、駅の大きな時計もそれぞれ、かっこいい。
駅員さんの格好が、赤いコートに、赤い服でオシャレ。
駅に止まるたびに、窓に顔をくっつけて、装飾を観察し、そのほかは外の景色に心奪われていたら
、あっという間に時間が過ぎて行った。
LNERでは、電車の中で食べ物や飲み物をオンラインで注文すると、席まで届けてくれるようだ。
私たちは、テーブルを間に向かい合った席で、前日にロンドンの市場で買ったチーズ、生ハム、バゲッド、葡萄などを出して食べた。
田園風景を眺めながらの、そんな食事は、とても美味しく感じられた。
イギリスの北部に入ると、景色が変わり、レンガはもっと赤っぽくなってゆく気がした。
ケンブリッジの建物は、藁の色のような、優しい黄土色で作られたものが多い。
また駅は鉄の装飾が増えて、とても優雅になってゆくようだった。
そのうち、海が見えてきて、スコットランドに入った。
木々は明らかに針葉樹林などの濃い緑が多くなり、透明な色の小川が少し起伏の多くなった土地を流れているのを見かけた。
午後になって、私たちはエディンバラで乗り換えて、グラスゴーの駅で降りた。
朝、7時半の電車に乗って、乗り換えや駅の待ち時間を含めて7時間近い旅だったのだけれど
とても快適だった。
もし、車でも同じだけの時間がかかるのならば、私は旅行者には電車の旅をおすすめしたいなと思った。車で田舎道を走りながら、小さな村々を通り過ぎるような旅もきっと楽しいと思う。
でも、もし高速道路での旅か、電車か、だったら、電車がいいなと今回思った。