白鳥の親子と引っ越し | ケンブリッジ生活・サンディエゴ生活

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2019年からのイギリス・ケンブリッジ生活を機にブログを始めました。2023年春からは、アメリカのサンディエゴに暮らしています。

天気が良い日は、できるだけ屋外で過ごすことに決めた。

風はふわっと軽くって、公園の地面はちょうど良い暖かさで草がふさふさしていて

天然の絨毯のような気持ちよさ。

穏やかな川と緑の景色の上には水色の空が広がる。

ケンブリッジの中でも、とても素敵な場所に自分が住んでいるなあと感謝するひととき。

でも、家主がフラットを売ることに決めたので、私たちは今新居を探しているところ。

 

 

一年のうちに、こんな良い気候を楽しめるのはとても短いのだから、家にいたらもったいないと、今日も、ここで読書をした。

 

この場所が好きなのは、白鳥の親子の岸辺の居場所の近くだからという理由もある。

白鳥の赤ちゃんたちが、小さな時から成長を毎日見ているので、この家族には他人とは思えない親しみを感じているのだ。

 

今日は、パンの耳を持っていった。

白鳥たちは、警戒心なく近づいてくる。手からパンを食べるくらいの勢いだ。

 

子供たちは、まだ毛がふわふわの部分(お尻のあたり)があって、声もヒヨヒヨといった音を立てている。小さな時は、短かった首も白鳥らしく長くなってきた。

 

 

私の足のすぐ隣に立ち、長い首を少し傾げてパンを待つ姿が、とても可愛い。

パンがなくなると、そのまま、その場所にストンと座り込み、どうやらお昼寝をするらしい。

 

 

目の前に無防備に白鳥の子供たちが、寛いでいて、私も一緒に座り込んで時間を共にしたくなった。

 

でも、そんなことをしたら、白鳥の父さんと母さんは、気が気じゃないだろうから

少し離れた自分のブランケットに戻って本を読むことにした。

 

ここに暮らしてから、白鳥が好きになった。

早朝に目覚めて外を見ると、宇治茶のような深緑の川に真っ白い白鳥がゆったりと浮かんでいて、水草を食べるのか、お尻をぷっかりと浮かせて首を水中に伸ばす姿が見える。

そのお尻がお茶に浮かんだホイップクリームのように見える。

 

ウオンウオンと、いう羽ばたきの音は白鳥が飛ぶときに聞こえてくるもので、3階の部屋のベランダから目の高さに2メートル近い羽をしならせて飛んで行く白鳥を見るのも好き。

 

白鳥だけではなく、ケンブリッジに来てから、いろんな鳥が好きになった。

ブラックバードの鳴き声の美しさ。そして黒い体と黄色い嘴のかわいらしさ。

前のアパートのベランダによく来ていたブラックバードのクロちゃんは、よく歌ってくれて、それはそれは可憐な透き通る歌声だった。

 

ロビンは、冬になるとよく見かける小さな鳥。小さな丸い体に暖炉の火のような赤い胸をしている。そのちっちゃなロビンがベランダに訪ねてきてくれると、すごく嬉しくなるのだった。

 

鳴き声は上品とは言えないマグパイ。

ギャーギャーという声を出すのだけれど、丸々とした大きな体に立派な青い羽を白と黒の体の尻尾の方にのぞかせて、とても粋な鳥。

ビリヤードのボールの8に似ているので、球ちゃんと私は名付けた。

 

考えてみれば、私はケンブリッジに来て、人間の友達や知り合いよりも鳥の知り合いの数の方がずっと多い。

 

外でマグパイのギャっという声がして、あ!と反応する私に、娘が何?と聞くので「ともだち」というと娘が笑った。

その後、ブラックバードのクロちゃんと鳩のヘンリーも紹介したら、半分呆れていた。

 

天気がいい間は出来るだけ、近所のコモンで過ごしたいなと思った。

引っ越さなくてはいけないので名残惜しいのだ。

できれば、同じ川沿いの近くの条件の合うところに引っ越したいのだけれど、、、。

 

家の目の前に川があって、昼寝をしているとボートを漕ぐ音や、川沿いを歩く人々の声が聞こえてくるのが、とても好きだった。

川向こうのメドウに咲く花や、冬には湖になってしまう野原の景色も、素敵だった。

そして何よりも、白鳥たちの姿が。

小さな、お母さんの背中に飛び乗って運んでもらうような子供たちがやんちゃなことをするのも、不恰好なティーンエイジャーの灰色の鳥になり、そしてだんだん優雅で美しい白鳥に変わってゆくのを毎日見るのが好きだった。

 

将来、ケンブリッジを離れて私はきっと、この川の景色を、白鳥の親子たちのことを思い出すだろうなと思った。