英国の初夏の午後の正しい過ごし方。
それは、野原でのピクニック。船遊び。サイクリング。
眩しい緑。青い空。爽やかな風。
人々は、水辺に、木の下に、野原の真ん中に、敷物を敷いて体を太陽の下に伸ばし、気持ちよさそうに寛いでいる。
家族連れ、友達と一緒。あるいは、1人で。
昼寝をしたり、本を読んだり、スケッチをしたり、お弁当を食べたり。
川に浮かべたゴムボート。カヌー。
クーラーボックスには、冷えたビール。
自転車で、緑のトンネルを通り抜ける。
牛たちがのどかに、草を食んでいる。
千年も前から立っている教会の前を通り抜ける。
私は、昼前になると、いそいそとお弁当を作り始める。
15分もあれば出来てしまう、簡単なお弁当。
今日は、昨日の残りのローストビーフを薄切りにして、ベランダでとれたロケットとリーフレタスを挟んだサンドイッチを作った。ピクルスとか、ピリッと辛いマスタードとか、マヨネーズにケチャップも。
パンは、いろんな穀物や種が入った香ばしい茶色いパン。
ペッパーの効いたツナサンドイッチを作るときもあれば、ピクルスとマチュアチーズのサンドイッチ。ハムにピーチジャムのサンドイッチということもある。
飲み物は、ほうじ茶。温かいミルクティー。さっぱりしたアイスティー。それも日によって違う。
デザートは、ジャムの空き瓶にヨーグルトとベリー。煎ったアーモンドスライスとオートミールを入れてその上からメープルシロップを回しかけたもの。
昼過ぎに家を出て、すぐ近くのコモンへ行く。適当なところで自転車を止めて、敷物を広げる。
あとは、敷物の上に体を投げ出して、空気を太陽を味わい、お弁当を食べて、おしゃべりをしたり、川を眺めたりする。
長居はしない。
気持ちの良い時間を過ごしたら、さっさと敷物を畳んで、バッグを自転車のカゴに放り入れて、帰路に着く。
多分、1時間も外出していないのだけれど、それは、とても気持ちが良い時間なのだ。
同じコモンに夕方に散歩に行くと、ピクニックをしている人が家族連れから友達同士に変わっていた。
そして、多くの人が片手にビールやサイダーを持っている。
パンクファッションのグループとかもいる。
この初夏のピクニックは、日本の花見の軽いバージョンのようにも思える。
外に敷物を敷いて、美しい景色を愛でながら、家族や仲間と一緒に時間を過ごすのだ。
公共の場で、なんとなく、程よい距離を他の人たちの存在に癒されながら、自然の中に身を置く。人の気配は感じていたいけれど、自分の、あるいは他人の領域を大切にしたいという英国人の個人主義的なものをこういうところでは、感じる。
そして、それを私は好ましく思う。
初夏の英国は、本当に美しく、気持ちが良い。
その時間を楽しむのには、やはり屋外で過ごすのが一番だと思う。