私の職業は「つうじ」?
最近、公証役場で日本人と外国人の婚約者の婚前契約書を公正証書にするための通訳を依頼されることが多い。公証役場って何をする所かということすら知らなかった私。この機会に勉強させてもらった。
① 公正証書って何?
公正証書とは、一定の取り決めについて、公証人(実際は、行政書士や弁護士に委託している)が書証として作成し、 内容を証明する書類のことを言うのだそうだ。公正証書は、各地に設置された公証役場で保管、管理される。絶対に外に持ち出されることはないのだそうだ。
② 公証人って誰?
公証事務を担う公務員のこと。公証役場で働いている公証人の多くは、退職した元裁判官、元検察官、判事や検事などを長く務めた法律事務の経験豊かな人で、公募に応じた人の中から、法務大臣が任命することとなっているそうだ。どうりで公証役場には年配の方が多い!公証人は,全国に約500名いて、公証役場は約300箇所あるのだそうだ!へ~!
③ 公正証書にすると何が得?
専門家である公証人が作成するので、法律の定める様式については確実にルールを守られ、 無効になることはない。また、証人2名が同席し、作成した公正証書は公証役場にて保管されるので、未発見・紛失のトラブルも基本的には発生しない。
更に、私文書の場合、契約書の違反があった場合、まずはその契約違反を理由に裁判をし、勝訴判決を得てから、強制執行をすることができるという流れになる。ところが、公正証書にしておけば、この裁判のプロセスをカットして、いきなり強制執行をすることができるのだそうだ。
今回の私が関わったのは、婚前契約書を公証役場で、公正証書にするというプロセスである。カップルの一方が外国人の場合、私のような通訳が必要になるのである。「英語ができる配偶者が通訳すれば?」と思うだろうが、配偶者や互いの親戚は駄目なのだそうだ。
内容も様々で面白い。「互いの性格、価値観、文化、習慣の違いを超えて、生涯の伴侶として愛し、慈しみ合い、支え合うこと云々...」など結婚式で神父様が言うような漠然としたことから、財産(金品、不動産など)についての取り決めが書いてある。行政書士の先生曰く、中には浮気をした時や、ギャンブルをした時の罰金まで盛り込むカップルもいるらしい!
こんなことを結婚前に公正証書に盛り込むと、相手に脅かされているように感じたり、本人が浮気をした時に却ってヤブヘビになりはしないかと要らぬ心配をする。
④ 公正役場で何をするの?
行政書士や弁護士が書いた公正証書(この時点では草案)を正式な公正証書としてもらう。公証人とアポを取り、当日、公正役場で公正証書の内容を公証人がカップルの前で読み上げ、一字一句正しいかどうか確認をする。この時、私の出番で日本語で読み上げられた難解な文書を英語に通訳をする。
実際、私は、公正証書は事前に行政書士や公正役場から入手をし、翻訳をしておき、当日それを持って行って読み上げる。その他、質問や補足説明、細かいやりとりも通訳する。
事前になかなか公正証書が送られて来ない場合、こちらもヤキモキする。当日ぶっつけ本番で通訳するには難しすぎる法律文書。内容もそれぞれなので、前にやったものを流用できない。以下、「え?日本人なのに知らなかった」の例。
「利息・配当・賃料などの果実」→え?果物?誤字と思いきや、辞書を調べると、以下のように書いてある。
「遺産の中に預貯金がある場合には利息が、上場株式等の有価証券がある場合には配当金が、賃貸マンションなどの収益不動産がある場合には賃料が発生します。 このような利息、配当、賃料などは、民法上、「果実」と呼ばれます。」
知らなかった恥ずかしい... と思いながらやっと最後のページをめくると、私の名前や住所が書いてある。通訳の個人情報も公正証書に盛り込まれるのだ。職業の欄でまた自分の目を疑う... つつうじ(通事)と書いてあるではないか!お腹がゴロゴロしてくる。
フムフム、そう言えば歴史の教科書で昔の通訳のことを「通事」と書いてあったのを思い出す。
やっと最後のページまで翻訳が終わった... 日本語の勉強も必要だと思う日々である。
