GW明けの佐世保から有川港への航路は、拍子抜けするほどガラガラだった。 きっと連休中は多くの人で賑わっていたのだろう。けれど、今はほんの数十名の乗客だけ。 広々とした船内で、ごろんと寝そべり、エンジン音に揺られながら心地よい眠りに落ちていく。 ふと目を開けて船名を見ると、「フェリーニューこしき 長崎」と書かれていた。二年前に乗ったときとは違う船らしい。まだ新しくて綺麗なのは嬉しいけれど、名前を変えていないせいで鹿児島の離島行きかと思っちゃって紛らわしいったらありゃしない。

有川港に着いたら、まずはデンリュウのポケストップをくるりと回す。旅先でも、こういう小さなルーティンがあるとほっとする。

それからカーシェアのステーションへ向かい、車に乗り込むと、迷わず海の見えるレストランへ向かった。海鮮丼と五島うどんが美味しくて、しかも絶景が広がるお気に入りの店だ。虎屋レストランという。
席に着くと、窓の向こうには青が何層にも重なった海。 その景色を眺めているだけで、胸の奥がすっと軽くなる。 運ばれてきた海鮮丼は、案の定、文句なしの出来栄え。五島うどんのつるりとした喉ごしも相変わらずで、思わず頬が笑ってしまう。 「やっぱり来てよかった」 そんな気持ちが自然と湧いてくる。

お腹を満たしたあとは、教会巡りへ向かった。 上五島は、かつて隠れキリシタンがひっそりと祈りを守り続けた島でもあり、今も大小さまざまな教会が点在している。世界遺産に登録されている場所も多く、車を走らせるたびに、島の静けさの中に積み重ねられた時間の重みを感じた。
近代的に建て替えられた教会もいくつかあったけれど、やっぱり昔ながらのレンガ造りの建物がしっくりくる。 その中でも、頭ヶ島天主堂は特にお気に入りだ。外観の素朴さと、内部に差し込む柔らかな光が、島の静けさとよく似合っている。長い時間をかけて守られてきた祈りの気配が、そっと胸に触れてくるようだった。

島の道を走っていると、ふいに視界が開けて絶景が広がる。青い海、そして青い空。 そのあまりの青さに思わず「青い海〜♪」と口ずさむと、隣からすかさず「どっこのロケーション♪」と相方がオレンジレンジの歌詞をかぶせてくる。あまりにも自然にハモってくるものだから、笑いながら「そこ拾うんだ」とツッコミを入れたくなる。 旅の静けさと、こういう何気ないやり取りが混ざり合って、上五島の時間がますます愛おしく感じられた。

カーシェアを有川港の近くに返却して、そこからは徒歩でGoogle評価5のカフェへ向かった。 店に入ると、落ち着いた空気が流れていて、旅の疲れがすっと抜けていく。 焼きバナナのプレートとアイスカフェラテを頼み、窓際の席でまったりと過ごす。 焼きバナナの香ばしさと冷たいラテの組み合わせが思いのほかよくて、思わず「これは当たりだ」と心の中で頷いてしまった。 店内には本棚があり、自由に読める本が並んでいる。旅先でこういう“くつろげる空間”に出会えると、それだけでその土地が好きになる。 どうやらここは宿泊もできるらしく、晩ご飯がとても評判らしい。次に来るときは、ぜひ泊まってみたいものだ。


帰りも、行きと同じ「フェリーニューこしき 長崎」に乗り込んだ。 船内は相変わらず静かで、ごろんと寝そべると、エンジンの低い振動が体に心地よく伝わってくる。 窓の外でゆっくりと遠ざかっていく上五島を眺めながら、「ああ、もう帰るんだな」と少しだけ名残惜しくなる。
日帰りの慌ただしい旅だったけれど、二年前に訪れたときとはまた違う発見があった。 同じ場所でも、季節や自分の気持ちが変わると、見える景色も変わるものだ。 その変化が、次に来るときの楽しみをそっと増やしてくれる。 佐世保に着く頃には、心の中に静かな満足感が広がっていた。