一秒たてば、肌の上からぬくもりが消え、
5分で、部屋を支配していた香りはなくなり、
姿が見えなくなって、たったの一時間で、
君が僕を掴み、背中に爪あとを残すほど
抱きしめたことさえ、
僕には疑わしくなってくる。
僕は目をつぶり、
バケツとスコップを抱えて
いつもの海岸へ急ぐ。
今、手元に残る生々しさが、
時間の波にさらわれないうちに、
波打ち際にたたずむ、
君の砂像の元へ急ぐ。
あの手のぬくもりを、この胸の香りを
一つずつ思い出し、
シャベルの先をうまく使って、
丁寧に、慎重に、作り直していく。
七日前に出会った時の、
崩れかけている君の砂像を
新しい情報で作り直していく。
寄せては返す、時間の波は、
すぐに君の表情を削り、
愛しい仕草を崩してしまうから、
僕はこんど出会うまで、
君の砂像を直し続ける。
直し続ける。
続ける。
ける。
る。
。
。
。
どうしても、生意気に動く真っ赤な唇が
思い出せなくなったので、
仕方なく、僕は電話をかけた。