尾池和夫の記録(424)京都の地球科学(377)『氷室』2025年9月

  京都の地球科学(三七七) 『氷室』2025年九月号掲載

   京都の地下構造と地下水(二)
                       尾池和夫
 京都府の北部、綾部市や舞鶴市の地域は、古生代ペルム紀の斑れい岩や玄武岩、花崗閃緑岩、砂岩泥岩互層がある。そこに東北東―西南西方向に延びる右横ずれ断層の上林川セグメントが区切る。活断層のセグメントとは、産業技術総合研究所のデータベースで、地震を起こす最小単位として認定されている活断層帯の区切りである。
 この「活断層データベース」では四種類の検索方法が使える。画面左の四つのボタンから検索を始める。(一)は起震断層の活動セグメント検索で、個別の活断層の情報を検索できる。(二)は、活断層関連文献検索で、論文や報告書を検索できる。(三)は、調査地検索で、調査地点の情報がある。(四)は、地下構造可視化システムで、地下深部の断面を表示できる。これらを使って、関心のある地域のことを詳しく知ることにより、具体的な知識を得て地震対策を考えることだできる。
 上林川活動セグメントについて、データベースの説明を引用する。「京都府北部を東北東―西南西方向に延びる右横ずれ断層。断層位置は活断層研究会(一九九一)、岡田・東郷(二〇〇〇)、中田・今泉 (二〇〇二) による。」
 活断層の走行は、北六〇度東、断層の傾斜は九〇度である。セグメントの長さは、二四キロメートル、平均変位速度は、千年あたり〇・一メートル、単位変位量は、二・八メートル、平均活動間隔、二万八千年、最新活動時期(野外調査結果)、最新活動時期(対応歴史地震)、地震後経過率、将来活動確率ともに記録無し、今後三〇年以内の地震発生確率(ポアソン)は、約〇・一パーセントとなっている。
 これらの用語は今後もたびたび使うので、それぞれにここで説明しておきたい。走行とは、地図の上で見る断層線の方向であり、上林川セグメントの場合は北から東へ測って六〇度の方向に走っている。
 傾斜とは地表面を〇度として下向きにどれだけ断層面が傾いているかを測り、九〇度というのは、鉛直に立つ断層面だということになる。
 平均変位速度は、活断層の活動性を示す指標である。認定に用いた基準となる地形や地層の変位量を、その形成時期からの時間で割った値。通常は一〇〇〇年あたりの変位量として示される。平均変位速度が同じでも、単位変位量が小さければ平均活動間隔は短く、単位変位量が大きければ平均活動間隔は長くなる。データベースでは、活動セグメントの活動性について具体的な数値がない場合には、地形表現から経験的に活動度を判断して次の値を仮置き値として与える。活動度がA級の場合には仮置き値なし、A級の下位の場合は一・〇、B級〇・五、B級下位〇・三、B級の最下位〇・一、C級〇・〇である。
 変位量は、活断層のずれによる相対的な移動の量で、上下(鉛直)成分、水平方向成分に区分される。さらに水平方向成分は横ずれ(走向方向)成分と傾斜方向(走向と直交方向)成分に区分される。それら三成分のベクトル和が実変位量である。
 平均活動間隔は、活断層が固有地震を伴う活動を繰り返すときの平均的な時間間隔のことである。一回ごとの活動間隔にはさまざまな要因によるばらつきがあることが知られている。将来の活動時期の予測などには複数回の活動間隔の平均値と、そのばらつきを考慮する必要がある。
 最新活動時期は、活断層が最近に固有地震を伴って活動した時期のことで、この時期と平均活動間隔から将来の活動確率を計算する。
 地震後経過率は、セグメントの最新活動時期から現在までの年数(経過時間)を、そのセグメントの平均活動間隔で割った値である。値が一に近づくと次の活動が近いことを意味する。一を超えることもある。
 地震発生確率(ポアソン過程モデルによる)は、将来の活動確率を求める際の確率モデルの一つで、過去の活動時期によらず、断層が活動する確率は常に不変であるとする考え方に基づく。最新活動時期が不明の場合でも将来活動確率を計算することが可能である。BPT分布モデルを用いたものと比較して、地震後経過率が小さい場合には高い確率、地震後経過率が大きい場合には低い確率となる。
 地震発生確率(BPT分布モデルによる)は、将来活動確率を求める際の確率モデルの一つで、活動間隔の分布モデルに、(Brownian Passage Time(BPT))分布を用いたもので、地震調査研究推進本部の長期評価では、この方法が採用される。
  断層に秋風がしむ別れかな         細見綾子
 京都府中部に三峠断層の三峠活動セグメントがある。京都府中部を西北西―東南東方向に延びる左横ずれ断層で、小河谷に系統的な横ずれ屈曲が見られる。走行、 北七〇度西、傾斜、九〇度、長さ二六キロメートル、平均変位速度は千年あたり〇・三メートル、単位変位量は三メートル、平均活動間隔八八〇〇年、最新活動時期(野外調査結果)は、一五一年前より前、今後三〇年以内の発生確率(ポアソン)は、約〇・三パーセントである。
 三峠断層帯の東端の南側に志和賀活動セグメントがある。京都府中部をほぼ東西方向に延びる左横ずれ断層で、断層の南側に下流側の堰き止めによる断層角盆地が発達する。走行は、北八〇度西、傾斜九〇度、長さ一三キロメートル、平均変位速度千年あたり〇・二メートル、平均活動間隔七六〇〇年である。
  休みなきフィールドワーク西行忌      大石高典