尾池和夫の記録(432)京都の地球科学(378)『氷室』2025年10月
京都の地球科学(三七八) 『氷室』2025年10月号掲載
京都の地下構造と地下水(三)
尾池和夫
上林川断層、三峠断層、志和賀断層を見てきた。その続きに樫原断層があり、それに平行して亀岡断層がある。
立命館大学には歴史都市防災研究所があり、そこが出版している「京都歴史災害研究」の第二号(二〇〇四年十一月一日発行)に植村善博さんが「変位地形と地下構造からみた京都盆地の活断層」という論文を出している。この論文が京都の活断層のことを一番よくまとめてある。これと産業技術総合研究所の活断層データベースを参考としてこのエッセイを書いている。
京都盆地西縁には比高三〇〇メートルほどの西山断層崖がそびえている。その麓に向日丘陵や大原野台地が発達している。そのような地形の境界となる麓に沿って、樫原断層、光明寺断層、金ヶ原断層が走っている。全体としては幅三キロメートルの断層帯をなしており、北北西~北西の向きで並走している。全長は約一七キロメートルほどある。これらを一まとめにして京都西山断層帯と呼ぶことが多い。
このあたりは活断層の破砕帯が崩れ易いので、昔の人が孟宗竹を植えて補強したために、今では筍の名産地になっている地域である。
筍のわらわらとある廃寺かな 藤田湘子
産業技術総合研究所(産総研)の活断層データベースでは、樫原断層を西山起震断層世木林セグメントに、灰方、光明寺、 金ヶ原の各断層を亀岡光明寺起震断層に区分している。両者の北延長は越畑―神吉断層および亀岡断層に連続しており、広義の三峠断層系の最南部に位置するということができる。このような断層の呼び方の関係を知っておいて、各ウェブサイトの情報を読み取ることが必要である。また、北区の西賀茂断層は樫原断層から約六・五キロメートル東方にあるが、南北走向で西上がりを示し、延長が五キロメートルと短いことから、これに含める場合がある。
樫原断層は、北は右京区嵯峨鳥居本から西京区松尾へ、さらに南下して樫原から向日市寺戸付近まで北から西へ一〇度~二〇度の走向で約九キロメートルにわたって連続する。松尾以北では基盤山地と低地をわける比高一五〇メートル程度の断層崖が発達し、丹波層群が大阪層群に二五度程度の低角度で衝上する露頭が松室西で観察されている。
この丹波層群という地層は、兵庫県篠山盆地周辺や神戸市の一部、大阪府北部の豊能郡から高槻市周辺、京都府および以東にかけて分布している地層である。中生代ジュラ紀(二億〜一億四〇〇〇万年前)にかけて形成された付加体で、全層厚は約九〇〇〇メートルである。丹波層群を基盤とする地域は地質学でいう地体構造では丹波帯と呼ばれる。西南日本内帯に属しており、東に続く美濃帯と合わせて美濃―丹波帯と分類されることがある。一方、大阪層群は、鮮新世から更新世前期(約三〇〇万年前― 約数一〇万年前)にかけて近畿地方に堆積した地質である。内湾性、堆積性の地層で、大阪平野を構成するほか、播磨平野、京都盆地、奈良盆地にも分布する。
つまり、樫原断層の上下運動では、日本列島の大地が大陸にあった時の地層の上に、日本列島が今の位置に来て後に堆積してできた新しい地層の上に、低い確度でのし上がるようになっているということが、松室西の露頭で観察できるという意味である。
南部では向日丘陵と低地との間に比高約五〇メートルの急斜面が発達している。大阪層群は二〇〇メートル程度の幅で東への撓曲構造を示し、東端で断層に切られて盆地底にもぐりこんでいる。新期の変位地形は急崖の位置より一〇〇~二〇〇メートル東側に分布する場合が多い。
嵯峨付近では二五〇メートル程度の間隔で二本の断層が並走し、鳥居本では京都盆地の低位段丘面(L面)の東縁に一致して分布することが多い。西芳寺川の扇状地面上には、比高約一・〇メートルの撓曲変形が認められる。連続ボーリングによる断面では、扇状地構成層は亜角礫からなる厚さ七~八メートルの砂礫層で、約四〇〇〇年前以降中世までの堆積物である。砂礫層の基底面は断層下盤で約一・五メートル低下しており、平均変位速度は一〇〇〇年当たり〇・三七メートルで
ある。
ここから南方では、低位段丘(L1)面東端の崖に沿って断層が推定されるが、変位地形は明瞭でない。樫原内垣外町付近では、丘陵端より約一七〇メートル低地側に撓曲崖が生じており、低位段丘(L2面)を約二・八メートル変位させている。南端付近の向日市寺戸では、H面礫層が約三〇メートル東落ちに撓曲変位しているのが確認される。両面での平均変位速度は一〇〇〇年当たり〇・一マートルである。
一方、ボーリング資料による基盤高度の縦ずれ変位量を推定すると、嵐山では約三〇〇メートル、御陵では下盤で基盤深度が二四三メートルに確認され、P波断面と合わせると縦ずれ総変位量は約三五〇メートルになる。
段丘の断崖のその冬の竹 石塚友二
