夕暮れ時がゆっくりやってきて
暗くなってもあまり悲しくならなくて
奇跡みたいな色の深さに足が止まる
うっとり見上げて風が吹いても
あまり淋しくならない季節

花の香りに
空気が染まってる
ドアから出る瞬間の
悦び

一年にほんの数日しか出会えない
あの時間がやってくる
すぐそばまで来てるのを感じてる

椅子をひっぱりだして
目を瞑って空を見上げて

ビー玉みたいなペリエもいいし
細いグラスのビールもいい
最初は白で徐々に赤…もいいかもしれない

両足をのばして足首を重ね
背中は委ね
本を開くのもいいし
頭の中に響く音楽の
描き出す絵を眺めるのいい
誰かの話す声を聞き流しても
気がついたら寝ていても
ただひたすら
その時間
何もかもで享受する

空には親しい星が光を投げかける

その時間
に溶け込むまでは
カタカタカタ……今日も文字を打ち込もう
考えたり 補ったり 想像したり 巡らせたり
カタカタカタ……文字を打ち込み続けよう

予感はもう
背中のそばまで
 








私が口にしたものが
私をつくる

私の食べたもの
飲んだもの
吸った空気

私の会う人
口にしたことば
聴こえる音楽
手のひらの触れたもの

私の着るもの
泳ぐ水
風にゆれる葉や花や色
匂い
流れていく風景

私を通り過ぎていくものが
私をつくる
私はつくられる

昨日から
私は野生の強さを感じているし
野生の濃やかさに感嘆している

昨日から
私は甘い湿度に潤っているし
響いて広がるものに耳を清ませている

朝から夜まで雨の音
うたた寝から目覚めたら
優しい夢が投げられていた

しあわせな気持ちって
きっとこういうものに
近いのかもしれない






朝起きたとたんに家を出て
電車に乗って駅で降りる

身体はココにあるけどまだ起きてなくて
中身はすっぽり出遅れたまま

昔っから
もう何回繰り返してるのかなぁ。。

人と会って少し話して
遠い膜の向こうにいるみたいで
自動的に挨拶したりうなづいたりしているうちに
少しずつ
膜の中に溜まってた水が減っていって
ようやく目の前にいる人に近づいて
置いてけぼりの中身が追いついてくる

起きてから3、4時間は
まだ"人間"になりきれないよなぁ。。

そんな一日の始まり
アタフタ アタフタ
身体と中身と目の前にいる人とがピタッとくるのは
夢中
のあと

夢中の時間が
きっと私を組み立てる
夜中にバラバラ好き勝手に散らばった私を
また一から組み立てて
うまい具合に

に仕立ててくれる


ようやくピタッとまとまった私は
夜になって家に帰り
夜になって自転車で走り出す
雨が少し降っている

受け取った筍は
まだ土の匂いがして
ピタッとまとまっていた私は
またもやほころび始める

遠い場所の土の匂い
西の方から届いた筍
抱きかかえるように持ち上げたら
服に土が着いた

雨が少し降っている

お鍋がグツグツいい始め
私はお風呂でのびている

グツグツグツ…

甘い香りに部屋は満たされていく

優しい気配に
また私は散らばり始める