紅にほふ/竹宮恵子 | 元漫画少女の雑記帳

紅にほふ/竹宮恵子


紅にほふ  大正・昭和・平成を生きた女性たち


初めてこの本を書店で見付けてからずっと大和和紀さんの

「紅匂ふ」と同じものだと思っていました。
咲子という芸者さんが主人公でタイトルも酷似しているから。

(ついでに咲子が押し入れに閉じこもるシーンも共通してる)

それでちょっと機会があり、読んでみるとまったくの別物だと

わかりました。

大和さんの方は勝新太郎さんの愛人としても有名になった

芸者さんの半生を漫画化したものですが、竹宮さんの方はというと

どうやら文庫版2巻のあとがきによると、竹宮さん御自身の母親、

叔母、祖母をモデルにした話だとわかりました。

モデルが実在するというのもあり、とてもリアルに感じましたし

太平洋戦争の前後もわかりやすく説明されていて

読んでみて改めて戦争の悲惨さを強く感じました。


と、昨日これを読んで(読みふけってしまって更新できんかったぜ)
いたのですが。今日テレビを見るとフィリピンで日本の軍人さんが

生きていたというニュースが。
本当に良く生きて下さいました。
彼らの60年間を想うと1日でも早く祖国の土を踏み、終戦を身をもって

感じ、「軍」という呪縛から解放されて欲しいと思います。


さて、この「紅にほふ」は大正・昭和・平成と生き抜いてきた

女性たち(作者の母親と叔母たち)が久しぶりに3姉妹で

集まり、思い出話をしながら、その回想シーン、そしてそれを

聞いている作者?とその彼氏とで構成されています。

作者?の母親は「初子」三姉妹の末っ子となります。

一番上のお姉さんは「咲子」

二番目のお姉さんは「梅子」

ちなみにこの3人は血の繋がりはありません。

咲子と梅子は大正六年に芸者として売られ、みんなで

門司港(福岡県。橋を渡ると山口県下関市)から満州へと

渡ります。当時日本人居留地がありったんだそうです。

華やかな咲子は芸妓として修行をし、片手が不自由だけど

働き者の梅子は裏方となりました。まだ初子は生まれていません。

そしてだんだんと世界情勢は変化していき、彼女たちも

必然的にそれに巻き込まれる事となります。
終戦後には姉妹がバラバラになってしまうし、それぞれに

ドラマがありました。

戦後間も無くの中国東北部の日本人たちについては、

山崎豊子さんのドラマにもなった「大地の子」でも読みましたが、

彼らはまだ生きてこられただけマシなんですよね。

この三姉妹とそれぞれの家族についてもそう。
三姉妹については平成で思い出話に花を咲かせているので

この人たちは生きぬいてこられたんだなと、安心感もあって

読めるのがとても救いに感じる程に事態は悲惨です。

そしてこんな今では考えられない時代を生き抜いてきたから

こんなに彼女たちはたくましいんだなと妙に納得しました。

いえ、彼女たちだけではなく、この時代を生きてきた人たち

全員がです。

フィリピンで60年間生きてきた元軍人さんもそうだし

小野田少尉、横田さん・・そして身近なおじいさん、

おばあさんたち。

現代の日本人の殆どが戦争を知らず、平和ボケしていると

言われていますが、それじゃいけないと思うし、後世に戦争の

悲惨さを伝えるためにも「漫画」という媒体も更に注目して

もっともっと作品を出して欲しいと思います。

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「紅にほふ」ですが、私は梅子さんの人生について特に

注目しました。

咲子のような華やかさもなく、手も不自由。

ずっと芸妓さんの世話という名の裏方に徹し、結婚しても

苦労の連続。だけどその人柄により敵は出来ない。
終戦後に子供たちを中国人がさらっていくと聞いて

子供たちだけ中国にいる親戚に託したシーンは泣けました。
帰国しても梅子だけが実家の家族に再会出来ず、旦那さんの

背中を押しながら子供たちを育てあげ、そして今は久しぶりに

再会した姉と妹と昔を語っている。

欲を言えるならこの3人のあとがきも読んでみたいな。

あとがきといえば、文庫版2巻の巻末に祖母と叔母・咲子の

写真が載っていますが、二人とも元芸妓だけあって美しい。
竹宮さんのお顔もこの本で初めて拝見しましたが

綺麗な方だったんですね。

「紅にほふ」文庫版 1巻

「紅にほふ」文庫版 2巻(完結)

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