22XX /清水玲子
「食べる」ということ
清水玲子さんの「22XX」は衝撃的なテーマを選んでいる。
「食べる」こと。
生き物は(植物の一部もかな?)必ず何かを食べる。
植物だったり、他の生き物の肉だったり卵だったり。
人間やペットになるとかそれらを加工されたものも食べる。
そして人間は「食べる」ということは日常茶飯事のことであり
基本的に朝・昼・晩と習慣的に食べる。
「食べる」という事に関して、この「22XX」を読んで考えさせられた。
人間は食べる事により、食べ物が栄養となり命を繋ぐ。
食べられた物は消化されて排泄物として出て行く。
もしロボットが食べ物を摂取するとそれは栄養にも何にもならない。
主人公のジャックはロボット。
かなり人間に近く作られたので、自分でも人間だと思っていた。
食欲もあるのでおなかがすけば食べる。
殺人用ロボットだった彼は、以前破壊工作員の人間と共に
投獄されそのまま放置された。
食べ物も均等に分けて命を繋いできたが、人間の方は
どんどん痩せ細り、食べ物がなくなって三週間後に
餓死した。
ジャックは痩せ衰える事もなく、そのままだった。
その時やっと自分は人間ではなかったんだと知る。
そんな過去がある中、ジャックは敵の部族にさらわれた
王女を救出する仕事でメヌエットという星を訪れる。
そこには王女の部族と、イエティ(イエティって・・汗)という
敵の部族、そしてフォトゥリス人という食人族が暮らしていた。
王女を無事に救出出来たら多額の賞金が手に入るから。
そこで皮肉にも餓死した工作員の弟と再会する。
弟はジャックに兄が食べられたのだと憎んでいる。
更に食人族の娘との出会い。
この部族はちょっと変わっていて、昼と夜では姿も性格も
変わる。彼が出会った娘も日中は少年のような姿だけど
夜になると長髪の大胆な女性に変化する。
これは狩のため、美しい姿に変化して獲物を待ち受ける
ホタルの一種から作られたエピソード・・らしい。
その娘になぜ人間を食べるのかと聞くジャック。
答えは死者の知識・美点・理想を自分のものに出来るから。
そうやって命を受け継いでいくので、むしろ食べられる事は
光栄だという。
彼女も父親を母親が食べ、その母親を自分が食べ
自分は子供に食べてもらうつもりだという。
もちろん食人については理解は出来ないけど、割と最近まで
そういう民族はいたらしい。昔映画にもなった。
もしかしたら今も現存しているのかもしれない。
彼らもそのような独自な理由があるんだろうかとふと思った。
とにかく読んで思うことは、「食べる」ということは命を繋ぐこと。
それもただ自分の命だけじゃない。
他の生き物の命を殺して栄養にすることで
その殺された生き物の命を自分が受け継ぐということ。
簡単に食べ物を残したり捨てたり好き嫌いしては
いけないなと思った。食べられるという事に感謝しなければ。
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設定に食人を持ってくるあたり、この頃から
清水玲子さんの独特すぎる自分のスタイルが確立して
いったんじゃないかと思う。
描かれた時期は「月の子」のあとで、「輝夜姫」や「秘密」
の前らしいので納得。「輝夜姫」あたりから残虐なシーンも
増えたような気がしていたし、「月の子」までは割と綺麗な
SFだったのが、スプラッタ・ホラー的なSFに変化してきたように思う。
ちなみにこれはエレナと出会う前の話らしく、エレナは
一切出てきません。
「22XX」清水玲子 文庫版